実はおもしろい検定試験(大空高く舞い上がる子供?)
日本語教育能力検定試験を詳しく
見ていると、
「出題者もよく考えるなぁ。」
と思わせる、おもしろい問題が
そこかしこにあります。
実際に問題作成をしてみるとよく
わかりますが、
文法にしろ何にしろ、正しい使い方
(=肯定証拠)を作るのは簡単ですが、
正しくない使い方(=否定証拠)を
作るのは、とても難しい。
そもそも私たちの頭の中にそのような
思考回路がないわけですから。
それを、誰にも名前を明かさずに黙々と
作成し、
しかも、学問上の整合性も保ちつつ、
なおかつ、教育現場の課題もチラ見させ
ながら、
これから日本語教師になる受験者にさま
ざまなメッセージを込めるわけですから、
出題者の作問技術の高さと貢献に、最大
のリスペクトを送りたいと思います。
「検定試験に合格しても、現場で使える
とは限らない。」
などと、まことしやかに言う検定対策講
師がいるそうですが、
私は、声を大にして言いたい。
「それは、あなたの解説が浅いからだ!
教育現場に落とし込むレベルまで
問題の1つ1つを熟読玩味すれば、
検定試験の問題の1つ1つがすべて
授業ネタの宝庫であることに気がつく
だろう。」
-篠崎大司
と、「今日の名言」風に言ったところで、
早速問題に行きましょう(^_^)
平成24年試験I問題3より。
以下。
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問題3【場所を表す格助詞】
(問題文前略)
また、「に」と「で」を比べると、「に」は
主体の存在場所を表す働きや、着点を表す
A
働きがあるのに対し、「で」は動作や出来事
が起こる場所を表す働きがあるという違いが
ある。
(12)文章中の下線部A「主体の存在場所を
表す働き」の具体例として最も適当なも
のを、次の1~4の中から一つ選べ。
1 広場では子供たちが大空に凧を揚げ
ています。
2 会議の資料は机の上に置いてくださ
い。
3 娘はインターナショナルスクールに
入学させます。
4 弟は去年の秋から北海道に住んでい
ます。
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いかがでしょうか。
答えは4。
「住んでいる」という動作の主体である
「弟」の存在場所「北海道」を格助詞
「に」で示しているからです。
おもしろいのは、選択肢1。
「揚げる」という動作の主体は「子供たち」。
で、格助詞「に」が示している場所は
「大空」なので、
「に」が主体の存在場所を表すとすると、
「子供たち」は大空に舞い上がっていること
になります。
怖い、怖い、怖い、怖い、怖い(笑)
出題者も、よくこんな例文考えたなぁ(感心)
ちなみに、選択肢2の「に」は到着点を、
選択肢3の「に」は移動先を表します。
今回は、場所を表す用法にフォーカスしま
したが、
格助詞「に」は、格助詞界の千手観音と
言われるほど(私が言っているだけですが(笑))、
用法が多岐にわたります。
また、用法が似た他の格助詞との使い分け
も結構大事。
今一度、しっかり復習しておいてくださいね。