実はおもしろい検定試験(丁寧が仇となって部長が燃える)
今回も面白い検定試験問題をご紹介
します。
平成28年試験I問題13から。
この問題は、ブラウン&レビンソンのポライト
ネス理論についての問題。
以下、問題。
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問題13 次の文章を読み、下の問い(問1~5)
に答えよ。
(中略)
一方、「ネガティブフェイス」への配慮が必要な
ときには、慣習的な間接的表現や控えめな表現を
用いるなどの方法がある。しかし、「フェイス」
D
への配慮よりも伝達の効率性が優先される場合も
ある。
(中略)
問4 文章中の下線部Dの例として最も適当なも
のを、次の1~4の中から一つ選べ。
1 (喫煙中の人に)あちらに喫煙室があるみた
いですよ。
2 (上司に)明日休みをいただけないでしょう
か。
3 (火事の現場で)火事だ!逃げろ!
4 (友達の隣で)あ、ペン忘れちゃった!
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ここでのポイントは、
「「フェイス」への配慮よりも伝達の効率性が
優先される」
の意味を正しく理解しているか、ということ。
フェイスとは、言い換えれば面子(メンツ)の
ことです。
つまり、下線部Dは、
「相手のメンツに対する配慮(=敬意)よりも
伝達の効率性(=情報を早く伝えること)が
優先される」
場合って、どういう場合?という意味なのです。
そうすると、選択肢1、2は有体に言うと相手
に気を使った表現(=相手へのメンツに配慮し
ている)のでダメ。
また、選択肢4は独り言なので配慮すべき相手
もいなければ、伝達の効率性を考える必要も
ないのでダメ。
一方、選択肢3は、丁寧さのかけらもない表現。
ですが、事態が切迫しているのであれば、たとえ
相手が目上であっても、
相手のメンツに対する配慮より、伝達の効率性が
優先される(=情報を早く伝えることが優先され
る)ためOK。
従って、答えは3番となるわけです。
で、ここで考えていただきたいのは、
逆に火事というシーンで情報の伝達性よりも
フェイスへの配慮が優先されたらどうなるか、
ということ。
例えば、会社が火事という状況で、社員が
部長に向って、
社員:部長、お忙しい中、大変申し訳ござい
ませんが、火事の火の手がすぐ後ろまで
来ておりますので、
ご足労ではありますが、今から非常階段
の方までお越しいただき、
1階まで降りていただいて、そのまま
最寄りの公園まで避難していただけると
大変ありがたいと存じますが、
部長様におかれましては、いかが……
…あっ、燃えちゃった!
となりかねないのです(笑)
緊急の状況では、相手のフェイスに配慮する
あまり、回りくどい言い方を使っていると、
手遅れになってしまう可能性が高いんですね。
丁寧に言えばいいってものではないのです。