理由を表さない「から」。

先日のセミナー

篠研の
 「圧巻!国家資格日本語教員試験【基礎試験】・
 日本語教育能力検定試験【試験I】徹底解説
 セミナー」(4月6日・7日開催)

より。

接続助詞「から」には、理由を表すものと
理由を表さないものがあります。

例えば、下の例文を見てください。

1)頭が痛いから、授業を休みます。
       ̄ ̄
2)テーブルの上にあるから、メガネ取って。
            ̄ ̄

どちらも「から」がありますが、
意味用法が異なります。

結論から言うと、

1)は理由を表す「から」、
2)は理由を表さない「から」。

どうしてそう言えるかというと、

例えば、1)の例文を下のように分解する
とわかります。

A:授業を休みます。
B:どうして?
A:頭が痛いから。

このように「どうして?」という問いに
「頭が痛いから」と答える会話が成立
するからです。

では、2)の例文はどうでしょうか。

同じように分解してみると、

A:メガネ取って。
B:どうして?
A:テーブルの上にあるから。

Aの「テーブルの上にあるから。」は
理由になりますか?

なりませんね。

つまり、Aの「テーブルの上にあるから。」
が直前の「どうして?」という問いの答え
になっていない、

そのため、会話が成り立っていないわけ
です。

だから、2)の例文の「から」は理由を
表しているわけではないということが
できるわけですね。

では、この「から」の意味はいったい
何なのか。

この場合、もし「から」を含んだ文が
なかったら、と考えたらよくわかります。

先の例文

2)テーブルの上にあるから、メガネ取って。

と言われたと思ってください。

もしそういわれたら、

「ハイハイ。」

と言って、テーブルの上の眼鏡を取って
相手に渡すでしょう。

では、もし「テーブルの上にあるから、」
がなく、いきなり

2)’メガネ取って。

と言われたら、どうですか?

きっと「どこ?」と言いたくなるのでは
ないでしょうか。

少なくとも、「メガネを取る」という
動作にスムーズに移せないと思います。

つまりどういうことかというと、

理由を表さない「から」の文は、
だいたい後件には、人に依頼したり
働きかけたりする文が来て、

「から」を含んだ前件には、相手が
動きやすいような情報を示す、

という機能があるのです。

「へえ、「から」にはそんな意味が
 あるんだ。知らなかった。」

そんな方もいるかもしれませんね。

日本語母語話者である日本人は、
そんなこといちいち考えなくても
直感的に分かるわけですが、

感度の高い学習者、分析能力の高い
学習者は、

「ん?この「から」は何の意味?」

と思って、教師に質問するかもしれ
ません。

日本語教師は、そういう質問にも、
適切に対応できるよう、

さまざまな文法事象を明確に言語化
しておく必要があるのです。

とはいえ、そんなこと、一朝一夕に
しかも自力でできるわけではありません。

最も効率的なのは、その道の熟達者
から直接教えを受けること。

これが一番手っ取り早いです。

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