『日本語教育の参照枠』を読む。(その2)
前回に引き続き
『日本語教育の参照枠報告』
https://qr.paps.jp/ShqFB
今回は、その2回目。
その前に、前回の「はじめに」の後に
掲載されている、こちらのスライドを
見ると、概要がよくわかります。
「日本語教育の参照枠」の概要
https://qr.paps.jp/NhzJx
第2回目の今日は、
「1 現状」から「2 課題」
までです。
議論の出発点ですので、しっかり
読んでいきましょう。
以下。
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1 現状
(1)日本語教育の標準や参照枠について
○ 我が国に在留する外国人は、令和2年末
現在で 289 万人に上り、人口比も2%を超
えて増加傾向にある。
日本で就労する外国人は令和2年 10 月末時
点で約172 万人となり、過去最高を記録して
いる。
在留外国人の定住化が進み、来日当初の生活
に必要な日本語や初期段階の日本語のみなら
ず、
教育や就労等に必要となる、多様な分野の日
本語が求められるようになってきている。
○ 日本語教育の標準や参照枠としては、国
内の外国人に対する日本語教育の内容及び方
法を文化審議会国語分科会が
平成 22 年 5 月 19 日に示した「生活者とし
ての外国人のための標準的なカリキュラム案
について」(以下、「標準的なカリキュラム
案」という。)のほか、
例えば、独立行政法人国際交流基金がCEF
Rを参考に作成した日本語教育の方法及び学
習成果の評価の枠組みである「JF日本語教
育スタンダード」がある。
○ 国内では、文化審議会国語分科会が策定
した「標準的なカリキュラム案」の活用が
推進され、
海外では、独立行政法人国際交流基金が策定
した「JF日本語教育スタンダード」の活用
が推進されている。
○ 世界中で国境を越えた人の移動が進み、
複数の言語を使用し、複数の社会に生きる
人々が増えている。
このような状況において、学習者が自らの日
本語をはじめとする複数の言語の熟達度を客
観的に把握したり、
具体的な学習目標を立て自律学習を進めたり
するための指標が有効であるが、
現在、国内外で共通して参照できる日本語に
関する指標は存在しない。
○ 現在、国内外で実施されている日本語能
力の判定試験(約 20 の機関・団体)は、
統一された日本語教育の標準や参照枠がない
ため、
個々の指標に基づき、レベルや判定基準等が
設定されている。
○ 日本語教育の標準や参照枠となる指標等
は、国として統一的なものはなく、
民間等で個別に作られたものが活用されてい
る。
(2)日本語能力の評価や判定試験について
○ 広く職業分野一般においては、業種や職能
に応じた日本語能力を判定するための試験が
求められるようになってきている。
例えば、介護に関する職業に従事する上で必
要な日本語能力を測定する試験など、
個別の職業に特化した日本語能力の判定試験
が開発されるようになってきている。
○ 国外からの外国人材の受入れにおいては、
在留資格「特定技能」等で入国する場合など、
一定の日本語能力が課せられている。
○ 国内外で日本語能力の証明のための試験
実施の需要は拡大している。
多様なニーズに応えられるよう、AI技術の
活用やオンラインによる受験が可能となる
ような試験の開発を促進し、
日本語能力の判定機会の充実を図る必要があ
る。
○ 現在、国内外の多様な日本語学習者に対
する日本語能力の評価に対応できる、国とし
ての共通の指標等が示されていない。
そのため、国内及び海外の日本語教育の現場
では、個々に独自に定めた指標による評価が
行われている。
しかし、国内外の人の往来や、生活、留学、
就労等に応じた日本語学習の目的の多様化を
受けて、
国内外で共通して参照できる包括的な評価の
枠組みが必要となっている。
○ 日本語に関する知識だけではなく、生活、
留学、就労等に必要な日本語のコミュニケー
ション能力が求められるようになってきたこ
とから、
そのようなコミュニケーション能力を測定し
判定することが求められている。
○ 外国人等の日本語能力を判定する方法と
して国内外で様々な試験が実施されている。
各試験の目的に応じて、得点の解釈基準や
レベル設定、レベル判定基準等が定められて
いるが、
学習・教育内容の多様化が進む中、各試験が
測定する日本語能力についての測定結果を相
互に参照できる枠組みを整備し、
利用できるようにすることが必要となってい
る。
2 課題
(1)日本語教育の標準や参照枠に関する課
題
○ 国内で生活する外国人等が日本での日常生
活を安全・安心に送るために必要な日本語の
教育内容として策定した「標準的なカリキュ
ラム案」は、
生活場面ごとに求められる能力が4技能(聞
く、読む、話す、書く)別で示されているが、
生活に必要な基本的な日本語場面が中心であ
り、
また、言語行動の難易度に対する配慮は十分
ではない。
○ 独立行政法人国際交流基金がCEFRを参
考に策定した「JF日本語教育スタンダード」
があるが、
CEFRの6段階(A1、A2、B1、B2、
C1、C2)のうち、高度なレベルに相当す
るC1、C2レベルの日本語能力の Can do
リスト1については、
CEFRが提示した Can do のみ挙げられて
いる。
○ 日本で働く外国人が増加し、外国人材の
受入れが進む一方で、外国人を雇用する産業
界・経済界が、
職務内容に応じて採用条件として求める日本
語能力について、参考となる指標が整備され
ていない。
また、特定技能等の在留資格では、入国要件
等に一定の日本語能力が課せられている。
しかし、国としての日本語能力の統一的な指
標は策定されていない。
(2)日本語能力の評価や判定試験に関する
課題
○ 日本語を学ぶ外国人等や外国人を雇用す
る企業等が日本語能力の判定に必要な試験を
選びにくい状況にある。
○ 日本語教育機関や日本語教師等に対して、
日本語学習の目的や言語活動に応じた多様な
評価の方法についての選択肢が十分に示され
ていない。
○ 職業ごとに求められる日本語能力の判定
基準については策定が進んでいない。
〇 日本語による口頭コミュニケーション能
力を判定するための大規模な試験が開発され
ていない。
○ 地域の日本語教室では、様々な日本語の
レベルの外国人等を随時受け入れている状況
にあるが、
日本語の熟達度を判定する指標がない中で、
レベルに基づくクラス分けが困難なために教
室運営に支障をきたすなどの問題が生じてい
る。
生活者が集まる地域の日本語教室において、
共通して用いることができ、かつ簡便な評価
指標がなく、評価ツール等も整備されていな
い。
○ 地域の日本語教室等で日本語を学ぶ学習者
の中には、試験団体が実施する試験の測定結
果に基づく評価を必要としない者も少なくない。
また、試験団体が実施する試験は、地域の日本
語教育に評価はなじまないとの意見もあるが、
評価とは正確な測定を第一義とする試験と同義
ではなく、本来多様で豊かなものである。
そのため、日本語教育の個々の現場で実施でき
るパフォーマンス評価の方法と事例及びポート
フォリオによる評価や自己評価などの多様な評
価の方法と事例についても幅広く示していくこ
とが必要である。
○ 例えば、留学生にとって必要な日本語の知
識や能力を測る試験で示された日本語能力のレ
ベル判定基準が、
そのまま「生活者としての外国人」や就労者
に対する日本語能力評価や学習目標の指標と
して用いられてしまうことがあり、
留学生とは異なる目的、場面で言語活動を行
う外国人等の日本語能力について、適切な判
定がなされていない。
○ 現行の日本語能力を判定する試験において
は、日本語による言語活動のうち、「読むこ
と」、「聞くこと」を評価するものは多く存
在するが、
「話すこと」、「書くこと」、いわゆる産出に
関する言語能力を評価するものが少なく、
その評価のための基準も明確に示されている
とは言えない状況にある。
○ 日本語能力を判定する試験については、試
験により測定・判定する日本語の分野やレベル、
サンプル問題、採点方法等の情報が十分に公開
されているとは言えないものもあり、
日本語教育機関及び日本語学習者が試験を選び
にくい状況にある。
さらに試験及び実施団体の適格性が担保されて
いるかどうかが分かりにくいという指摘がある。
○ 日本語能力を判定する試験においては、こ
れまでカンニング等の不正行為や合格証の偽造
等の問題が度々指摘されている。
例えば進学時の受験資格取得などの社会的ニー
ズに応える日本語能力を判定する試験実施機関
に関しては、試験の実施に際し、最大限の対策
が求められる。
以上のような現状と課題に鑑み、言語・文化の
相互理解・相互尊重を前提とし、
国内外の日本語教育に関わる全ての人が日本語
の学習・教授・評価に関して参照するための国
としての共通の指標等を示すとともに、
多様な評価の在り方を示し、包括的な評価の仕
組みを整えていくことが必要である。
「日本語教育の参照枠」が作成されることによ
り、
現在民間の試験実施機関等がそれぞれの基準で
実施している日本語能力の判定試験の間で通用
する共通の参照基準として利用されることも期
待される。
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いかがでしょうか。
要は、今までさまざまな日本語試験が
それぞれの評価基準で行われてきたが、
それを統一的に評価する物差しを作りま
しょう、ということ。
そうすると、私としては、
「じゃあ、その参照枠で学習者の日本語
能力評価をどう仕組み化するの?
その仕組みに国はどういったお墨付きを
つけるの?」
といったところが非常に気になります。
ただ
「こんな参照枠を作ってみました!
どうぞっ!」
では、特に産業界への波及効果はあまり
期待できないと思います。
この辺りも念頭に置きながら、
これから読み進めていきたいと思います。