日本語指導が必要な外国人児童生徒の本当の数。
日本語指導が必要な外国人児童生徒調査
と言えば、
2年に1回文部科学省が実施している
「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に
関する調査」
があります。
直近では、令和3年の調査が発表されていますね。
「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に
関する調査(令和3年度)」の結果が確定しました
:文部科学省
https://qr.paps.jp/q9sez
これを見てみると、平成20年では外国籍、
日本国籍併せて33,470名だったのが、
令和3年では58,307名となっています。
実に、1.74倍。
特に平成26年からなかなかな勢いで伸びて
います。
ただ、これはあくまでも公立学校に通う
児童生徒の数。
これに私立学校に通う児童生徒を足すと
さらに増えると思われます。
ですが、問題はここではありません。
そもそもこの数自体、どれだけ実態を
反映しているのか、ということです。
大阪教育大学の臼井智美先生によると、
実際に日本語指導が必要な児童生徒の
数は、
本統計の倍はいるだろうとのこと。
どういうことかというと、
そもそも、誰が日本語指導が必要か
どうかを判断しているのか
を考えてみればわかります。
おそらくは、その外国人児童生徒が
在籍しているクラス担任の先生か、
あるいは、その学校の校長先生。
残念ながら、そうした先生方には
日本語教育の知識もなければ、
外国人児童生徒の日本語習得、
児童生徒のバイリンガル教育に
関する知識は、ほとんどありません。
そもそも教職科目の中にそのような
科目がないからです。
私たち日本語教師にとっては常識
的な、BICSとCALPの知識もありません。
そういう方が外国人児童生徒に対する
日本語指導の必要性についてどう判断
するかというと、
「この子は、もう日常生活を送る
ぐらいの日本語は身につけた。
日本人の友だちとも仲良くやって
いる。
もう日本語指導は必要ないだろう。
あとは本人の努力で教科の勉強を
すればいい。」
となるのです。
つまり、CALPの支援は必要ない、と
判断してしまうんですね。
ですが、外国人児童生徒にとって
BICS以上に必要なのはCALPの支援。
日本人児童ですら、なかなか難しい
教科学習を、
彼らは常に言語的ハンデを抱えながら
勉強しなければならいわけです。
例えば、先日の志村先生のお話だと
現職の学校教員に、学習言語と生活
言語が混じった語彙リストを見せて、
「外国人児童生徒が知っていると思う
言葉を指摘してください。」
と尋ねたところ、教員全員が
「『足す』は知っているはず。」
と答えたそうです。
ですが、実際は、「足す」という語彙は
日常生活ではほとんど使われず、
もっぱら算数の時間に使われる語彙で
教員も知っていると思ってことさら
指導しないため、
当該学年の外国人児童生徒の多くは
その言葉を知らないし、分からないの
です。
当然、学習が頓挫してしまうと。
そうすると、学校教員はどう判断する
かというと、
「この子は、日常生活の日本語は
できるのに、
教科の勉強となるととたんにでき
ない。
もしかしたら、発達障害なのでは
ないか。」
となって、特別支援のクラスに移動
させると。
CALPでは、こういったことが頻繁に
起こる、
だから、本当はCALPの指導こそしっかり
しなければならないんですね。
そして、こうした問題を解消できるのが
他ならぬ私たち日本語教師なのです。
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「日本語指導が必要な児童生徒に対する
日本語教育
-児童生徒の教育課題と指導関係者との連携-」
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https://www.kanjifumi.jp/usui_seminar/
では、こうした外国人児童生徒の
教育課題と、
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