「技能実習制度のあり方」(たたき台)を読む(その6)。

引き続き、法務省のサイト

技能実習制度及び特定技能制度の在り方
に関する有識者会議(第5回)
https://bit.ly/43rLO7M

より。

下の「日本語教育ニュースフラッシュ」
でもご紹介していますが、

中間報告が出たようです。

ただ、たたき台と大きな違いはない
ようですので、

ひとまずこのまま「たたき台」を見て
いこうと思います。

中間報告書 ( たたき 台 )
https://bit.ly/3L6RgpH

このうち、今回は「第3 委員の意見」の中の

「2 人権侵害の防止その他外国人にとっても
  我が国にとってもプラスとなる仕組みと
  するための方策について」のうち、

「(3)外国人の日本語能力の向上に向けた取組
 (コスト負担の在り方を含む。)」

についてみていきます。

私達にとってはまさに本丸、最も関心の
あるところですね。

以下。

===================

(3)外国人の日本語能力の向上に向けた取組
 (コスト負担の在り方を含む。)

(来日前の日本語能力の担保方策)

○ 少なくとも外国人材が日本に来た際に、自
 分で病院や役所に行けるように、日本語を
 しっかり学ぶことは求めていくべき。

 技能だけでなく日本語能力も一定のレベル
 を設けて、

 自立した生活を送り働くことができる外国
 人材を受け入れる仕組みにしていくことで、

 結果的に監理団体や支援団体の負担を少し
 でも減らすことにつながる。

○ 入国前に、一定の会話が通じ、自分自身で
 要求ができる程度の日本語能力があること
 は必須。

 技能実習制度については、入国時には、日
 本語能力試験のN5以上、

 技能実習2号修了時には、技能検定ととも
 に日本語能力試験のN4以上の試験合格を
 必須にするべき。

○ 日本語教育について、不当なハードルに
 ならない取組が必要。

 入国前に課す日本語能力が高すぎると教育
 費用が不透明な形で要求されたり、

 日本語能力の偽造証明書が高いレートで流
 通するなど、別の負担が生じることがある
 ため、

 入国前に要件を課すとしても、可能な限り
 安く、透明性の高い形で、十分な供給がさ
 れる必要がある。

 ただハードルを課すだけでは、そこに至る
 道筋で様々な中間搾取が生じかねないため、
 十分な検討が必要である。

○ 日本語能力は非常に重要で大きな要素を占
 めているが、

 入ってくる段階でN5レベルの合格を条件と
 すると、ハードルが高くなってしまい、

 有用な外国人材に日本が選ばれなくなると
 いうもろ刃の剣の面がある。

(来日後に日本語能力を向上させる方策)

○ 外国人労働者の適正な就労に向けた課題と
 して、

 日本語の充実を挙げている事業所が多くあ
 り、

 日々の日本語によるコミュニケーションが
 多いほど、日本語習得が円滑にされている
 傾向がある。

 技能実習生の日本語習得機会の確保だけで
 なく、

 コミュニケーション能力向上のために地域
 や事業所における担当スタッフを配置する
 ための支援を行うことなどにより、

 日本語能力の向上や技能実習生の定着につ
 ながるのではないか。

○ 自治体による日本語能力向上の取組につい
 て、各自治体の実情に合わせた取組を行う
 必要があるが、

 それには国の財政支援や日本語教育に関す
 るノウハウの提供など手厚い支援が重要で
 ある。

○ 語学教育については、企業側も外国人本
 人のどちらも働くことに注力したいので学
 習のインセンティブが弱い。

 地域による日本語教育が拡充されることも
 重要だが、

 企業と外国人本人の双方にとって学ぶこと
 がプラスになるような動機付けの仕組みを
 作ることが重要である。

○ 技能実習制度においては、監理団体が行う
 入国後の日本語教育について、

 講習方法や内容、科目ごとの時間数が監理
 団体によってかなり濃淡があるため、

 一定の基準を設け、講習の質の担保をする
 ことが必要である。

○ 優良な実習実施者又は監理団体の要件とし
 て、「地域社会との共生」の中に「日本語
 学習の支援」があるが、

 飽くまで選択肢の一つであり、選択しなく
 ても優良になることができる。

 日本語学習の重要性に鑑みると、必須要件
 として、優良な実習実施者や監理団体を認
 定するための要件として更なる加算措置を
 図る等、

 受入れ企業等が積極的に取り組むインセン
 ティブを高めることは重要。

○ 特定技能制度では、登録支援機関に日本
 語学習機会の提供が義務化されているが、
 機会の提供にとどまっている。

 適切に情報提供がされているか不透明であ
 り、

 実効性に課題がある点については見直すべ
 き。

○ 日本語を学ぶ意欲のある外国人材と日本語
 教育を提供する自治体やNPO等のマッチ
 ングを支援する仕組みも必要である。

 また、政府においてオンラインの教育ツー
 ルの充実等にも努め、周知を図ることも必
 要。

○ 仕事を通じた、コミュニケーションの中
 で日本語が上達する部分がある。

 事業主が仕事をさせる中で、日本人の社員
 と一緒に仕事をするような機会を積極的に
 作り、

 技能実習修了時に日本語検定等でチェック
 する機能を働かせることによって、

 自然と日本語を覚えていくような環境を作っ
 ていくことも重要ではないか。

○ 業務遂行上の安全性などのための日本語は
 制度としてきちんとやるとして、

 生活面の日本語は、地域のNPOやボラン
 ティアを活用することで、地域での国際交
 流にもつながるので、

 そのような地域の役割に対して支援するこ
 ともあり得るのではないか。

(来日後の日本語教育の費用負担の在り方)

○ 日本語学習のコスト負担については、日本
 政府の呼寄せ対策の一環として、

 オンラインコンテンツを作成したり教科書
 を配布するなどして、

 外国人材の負担をなるべく少なくすること
 が必要。

 また、教師が必要な場合には、日本政府が
 支援して、

 あるいは受入れ事業者も一定の負担をして、

 安い費用で学べるような場を提供すること
 も一つの方策である。

○ 外国人労働者にコスト負担のしわ寄せが
 生じることは問題。

 実習実施者が一定程度負担し、必要に応じ
 て国が支援することも必要ではないか。

○ 受入れ企業が業務に必要な日本語教育を
 することは当然だが、

 日本の産業や社会に有益な人材を育てる
 という意味では、

 公的な負担で日本語教育の仕組みを作る
 ことも考えるべき。

 ドイツには、国も費用を負担して、ドイ
 ツ語のプログラムを受講できる仕組みが
 あり、

 これを受講すると在留資格の関係で有利
 に取り扱われるとのことである。

 職業訓練として必要な日本語能力につい
 ても同様の仕組みを考えたらどうか。

○ 技能実習生に必ずしも日本語能力向上の
 意欲が高くなく、

 また、受入れ企業も仕事上は問題がない
 ので、

 仕事を休んでまで学習する必要性を感じ
 ていないというのが実態ではないか。

 この意識をどう変えていくかが非常に大
 きなポイントである。

 一方で、日本語が通じないために仕事外
 で問題が起きた時に企業や監理団体が常
 にサポートしなければならず、

 負担となっているため、長く働いてもら
 いたい、

 長く働きたいのであれば、日本語をしっ
 かり学ぶ、学ばせるというインセンティ
 ブが働く仕掛けを作る必要がある。

 外国人本人、受入れ企業、自治体がそれ
 ぞれ役割と費用を一定程度負担すること
 は仕方がない。

 加えて、これを国としてどうやってサ
 ポートしていくかが求められる。

==================

> 入ってくる段階でN5レベルの合格を条件と
> すると、ハードルが高くなってしまい、
>
> 有用な外国人材に日本が選ばれなくなると
> いうもろ刃の剣の面がある。

N5というのは、ご存知の通り、日本語能力
試験でも最低ランクのレベルです。

それが高いハードルというのであれば、もは
や日本語力は問わないというに等しい。

にもかかわらず、外国人には日本人とコミュ
ニケーションできるほどの日本語力を期待
している。

大きな矛盾です。

あくまでも私の肌感覚ですが、委員や企業は
外国人労働者に対して少なくともN3程度の
日本語力を期待していると思われます。

なぜなら、それ以下だといわゆるフォーリ
ナートークや「やさしい日本語」といった、

日本人側に相応のコミュニケーションスキル
が必要になってくるからです。

ですが、そうしたことの議論は一切ない。

おそらく、そういうことを求められると、
日本人の方は、結構ストレスを感じ、

「外国人は日本語が通じない。」

のような形で不満が出、

結果、そのストレスと外国人労働者に
ぶつけ、

暴力や給与不払いといった形で顕在化する
のではないか、と危惧しています。

> 講習方法や内容、科目ごとの時間数が監理
> 団体によってかなり濃淡があるため、
>
> 一定の基準を設け、講習の質の担保をする
> ことが必要である。

講習の質を担保する必要を感じているにも
関わらず、

委員に日本語教育の専門家が一人もいない
というのは、やはり大きな問題です。

誰が責任を持った質の議論をするのでしょう
か。

> 事業主が仕事をさせる中で、日本人の社員
> と一緒に仕事をするような機会を積極的に
> 作り、
>
> 技能実習修了時に日本語検定等でチェック
> する機能を働かせることによって、
>
> 自然と日本語を覚えていくような環境を作っ
> ていくことも重要ではないか。

この点については、業種によっても事業所
によってもかなり差が出ると思われ、

ここに期待することはできないと思います。

> 業務遂行上の安全性などのための日本語は
> 制度としてきちんとやるとして、
>
> 生活面の日本語は、地域のNPOやボラン
> ティアを活用することで、地域での国際交
> 流にもつながるので、
>
> そのような地域の役割に対して支援するこ
> ともあり得るのではないか。

結局ボランティア頼みなんだなぉ、と
つくづく思います。

当然ですが、(個人差はあるにしても)
優秀な日本語教師は概ね有償で高単価な
サービスに流れます。

今であれば、オンラインレッスンです。

時給3,500円で好きな時間にレッスンでき
るわけですから。

特に、若い日本語教師はすでにそちらに
流れています。

次に行くのが、日本語学校です。

そして、どこでも勝負できなかったり、
未経験なのでまずは経験を積みたい
という方が、

概ねボランティアに流れます。

なので、あまり指導スキルは期待できま
せん。
(もちろん個人差はありますが。)

問題なのは、国や自治体、企業がたいし
た費用を出さず、

ボランティアに依存しているにもかかわ
らず、

「日本語教師は質が低い。」

などと、あたかも日本語教育業界全体の
質が悪いかのようなことを言いだしかね
ないということです。

日本語教師の質が悪いのではなく、
雇用主側の質の問題と私は考えています。

皆様は、どう考えますでしょうか。


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