2誌合同。「日本語教育有識者会議」を読む(6)
引き続き、
「日本語教育の質の維持向上の仕組みに
ついて(報告)(素案) 」
https://bit.ly/3hxTout
を2誌合同で解説していきます。
2誌連番で解説いたしますので、片方しか
登録していない方は、両メルマガをご登録
なさるか、
下記サイトをご参照ください。
篠研の日本語教育能力検定試験対策
https://www.kanjifumi.jp/kentei/
(メルマガのバックナンバーが読めます)
また、かなり膨大な資料ですので、かいつま
んだ解説となることを予めお伝えしておきま
す。
詳しくは、上記資料をご参照ください。
第6回は、
「(イ)専門的な知識及び技能等を必要とする
日本語教師の資格に関する仕組み」
の続きです。
具体的には、
「3.具体的な認定基準、審査基準等の方向性」
です。
ここでは、点線枠で主に「留学」類型の機関
の認定基準や審査基準について述べられてい
ます。
以下、独断と偏見で気になった部分をピック
アップします。
--------------------
○総則等
総則等において、個別の確認項目を規定する
前提として、
・社会の要請に応じ、認定を受けた日本語教
育機関の目的を達成するため、日本語教育
機関が「留学」「就労」「生活」類型に係
る日本語教育の適切な目的・目標を定め組
織的な教育を行うこと
(中略)
○教育の内容・方法等に関する評価
【教育課程等】
・教育課程等は日本語教育機関における教育
活動の根幹であり、自立した言語使用者を
育成するために必要な教育課程等の要件と
して、認定基準においてその外形や教育内
容等について評価することを検討する。
・「留学」類型の機関としては「日本語教育
の参照枠」のB2レベル相当以上を到達目
標とする教育課程を置くこととし、留学生
として入学する者の進学、就職、自己研鑽
等多様な目的に応じて、日本語習得レベル
を提示した上で、それらの教育課程を提供
するものが認められるものとする。
・その上で、教育課程等の外形については、
修業期間、授業時数、単位時間等について、
これまでの法務省告示基準に基づく運用実
績等を踏まえつつ、規定することを検討す
る。
・評価制度には、標準的な日本語教育機関の
質の確保を目的とするが、到達目標に必要
な学習時間を確保した上で専門教育との円
滑な接続を目的とした教育内容を設定する
教育課程や、高度人材受入れを促進する教
育課程等、社会のニーズに応じて、教育上
の観点から特色のある日本語教育の普及を
目的とした機関の評価の仕組みについても
検討することとする。
・留学生については、認定機関における教育
内容・方法等や、教育上・在留管理上の受
け入れ体制などが整備され、適切かつ確実
な運営を行う機関であることを前提に、ゼ
ロレベルからの教育課程の受入れの可能性
や、非漢字圏からの留学生の増加などを踏
まえ、教育上の観点から実態・課題などを
把握した上で、修業期間等の方向性につい
て検討する。
・また、教育課程の内容・方法等について、
文化審議会国語分科会が策定した「日本語
教育の参照枠」に基づいた基準を文部科学
大臣が定め、その基準を満たすことを求め
ることとする。
--------------------
いかがでしょうか。
まずは、日本語教育機関を「留学」「就労」
「生活」という3つの類型に分類し、
それぞれの特性に応じた認定基準を設けよう
としています。
とはいえ、「留学」以外はまだ検討中と
いったところ。
「就労」「生活」については、他の省庁
との調整にかなり時間がかかるんじゃない
かと推測します。
また、「自立した言語使用者」というのは
文化庁が出した
「日本語教育の参照枠 報告」
https://bit.ly/3PJNbbs
の中にあるものを受けたもので、ざっくり
いうと中級レベルです。
さらに、
「「留学」類型の機関としては「日本語教育
の参照枠」のB2レベル相当以上を到達目
標とする教育課程を置く」
とあります。
B2レベルがどれくらいかと言うと、
「自分の専門分野の技術的な議論も含めて、
具体的な話題でも抽象的な話題でも複雑な
テクストの主要な内容を理解できる。お互
いに緊張しないで熟達した日本語話者とや
り取りができるくらい流ちょうかつ自然で
ある。」
というレベル。
中級と言っても、かなり上級に近いレベル
かなと思います。
これをマストにするとなれば、
就労目的の学生を受け入れてきた日本語学校
の締め出しになるのはもちろんのこと、
(これ自体は大変いいこと。)
「2年間で日能試N3合格して専門学校に
進学する。」
を目標にしていた教育機関にとってもちょっ
と厳しくなるかもしれません。
いずれにしても、上記報告を読む限り「留学」
に関しては、従来の日本語学校設置基準を
下敷きにして、
「日本語教育の参照枠」
を教育評価の基準に据えた運営がなされる
ものと思われます。
とすると、私たち教師は行動中心アプロー
チの考えに則った、
「言葉を使って具体的な行動ができる。」
ことを目標にした指導法を志向する必要
があります。