各地・各分野に広がる「やさしい日本語」
今回も「日本語教育ニュースフラッシュ」
でご紹介していますが、
「やさしい日本語」が各地・各分野に
広がっています。
まずは、こちらの記事。
◆銀行の届け印は「名前のスタンプ」 やさしい
日本語を共通言語に:朝日新聞
https://bit.ly/3TWkyZ6
こちらは、東邦銀行での取り組みです。
記事の一部を紹介。
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【福島】困っている外国人に出会っても
「英語に自信がない」と見て見ぬふりを
したことはないだろうか。
実は英語より、わかりやすく簡単な日本語
で伝える工夫をしたほうが、正確で早い
コミュニケーションが取れる場合もある。
共通言語としての「やさしい日本語」を
普及させようという取り組みが広がっている。
「名前のスタンプです」
「どこに住んでいますか?」
1日、東邦銀行の研修センター(福島市)。
窓口業務を担う行員8人が講師の助言を受け
ながら、
銀行の窓口で使う機会の多い「お届け印」や
「おところ」といった用語や表現の「やさし
い日本語」への言い換えに挑んだ。
参加した小椋裕太さん(22)は1カ月ほど前、
住所変更のために訪れた外国人に対応した。
「手続きに必要な身分証明書や印鑑を言い
換える簡単な日本語がすぐに思い浮かばず、
同僚にも助けてもらった。
学んだことを次にいかせるよう普段から
練習しておきます」
と話した。
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続いて、こちらの記事。
◆外国籍住民にやさしい日本語 牧之原で講座、
市職員が学ぶ:中日新聞
https://bit.ly/3Xji6yS
同じく、記事の一部を紹介。
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外国籍住民らとのコミュニケーションを円滑に
するため、
牧之原市国際交流協会は十七日、市職員を対象
に「やさしい日本語講座」を市役所で開き、
若手職員ら約三十人が、分かりやすく親切な
話し方や書き方を学んだ。
国際多文化研修ラボ(神奈川県横須賀市)の
松本義弘さんが講師。
松本さんは一文が長い文章や「おいでになられる」
といった敬語・丁寧語を外国籍住民にとって
難しい表現に挙げた。
易しい日本語に言い換える練習では「無料です」
を「おかねはいりません」に、
「常用薬を申告してください」は「まいにち
つかっている くすりを おしえてください」
などとする回答例を紹介。
時候のあいさつや具体的な指示がない情報は
「日本語を母語としない人には大きな負担」
になるとして、
伝える情報を取捨選択する必要性も語った。
市には現在、ブラジル、フィリピン、ベトナム
など人口の約5%に当たる約二千二百人の外国
籍住民が暮らしている。
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この「やさしい日本語」は、
私たち日本語教師からすれば、普段学習者と
コミュニケーションをするときに使っている
▼ティーチャートーク
▼フォーリナートーク
とほぼ同じです。
つまり、私たちが授業で普段使っている
コミュニケーションスタイルは、
日本語教師でない方にとっては、非常に
価値のある、喉から手が出るほど欲しい
スキルなんですね。
ということは、それだけ私たち日本語教師は
付加価値の高いスキルを持っているわけです
から、
それを社会貢献に使わない手はないと思う
わけです。
先般よりご紹介している
篠研企画 庵功雄オンラインセミナー
「やさしい日本語」の理論と実践
-日本社会との関係性について考える-
(12月10日開催)
https://www.kanjifumi.jp/yasasii_nihongo_seminar/
では、私たちが持っているこのスキルを
社会の中でどのように活用できるかを
具体的に紹介する予定です。
具体的なセミナー内容は、以下の通りです。
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●「日本人」「外国人」「外国人の子ども」
とはどのような人か?
・日本語教育に関わる基本概念について確認する
●「やさしい日本語」の理念
・日本社会は既に外国人抜きでは成り立たない
・30年後の日本社会はどのようなものであるべきか
●「やさしい日本語」研究の全体像
・上の理念を踏まえて、「やさしい日本語」研究の
全体像を把握する
●居場所作りのための「やさしい日本語」
・成人の定住外国人にとって日本が居場所と感じら
れるための条件を「やさしい日本語」との関連
から考える
●地域社会の共通言語としての「やさしい日本語」
・定住外国人と日本語母語話者との共通言語として
の「やさしい日本語」の可能性について考える
●地域型初級としての「やさしい日本語」
・地域型日本語教育の特徴を考え、それにふさわし
い文法シラバスを「やさしい日本語」との関連
から考える
●ミニマムの文法としてのStep1,2
・「母語でなら言えることを日本語でも言える」
ようになるために必要な最小限(ミニマム)の
文法としてのStep1,2について概観する
●多文化共生にとって必要なこと
・多文化共生は耳に心地よいことばだが、言語的、
文化的コードを異にする他者との共存には困難
点が多い。その一部を可視化して提示する
○ワーク:「やさしい日本語」への書き換え
・定住外国人を含む非日本語母語話者にとって難解
な文書を「やさしい日本語」に書き換える作業
をグループ単位で行う
●日本語は習得しにくい言語か?
●日本語習得と漢字
・日本語は言語システムとしては世界の言語の中で
標準的なものであることを確認する
・日本語習得における漢字の問題を確認する
●バイパスとしての「やさしい日本語」
・外国にルーツを持つ子どもに対する日本語教育に
おける留意点を「やさしい日本語」の観点から
考える
・ろう児に対する日本語教育の必要性や留意点を
「やさしい日本語」の観点から考える
●マジョリティにとっての「やさしい日本語」
・マジョリティ(日本語母語話者)にとって「やさ
しい日本語」が持つ意味を考える
●日本語表現の鏡としての「やさしい日本語」
・「自治会への勧誘」を例に、マジョリティにとっ
て「やさしい日本語」を学ぶことのインセンティ
ブ(動機づけ)について考える
○ワーク:「上履き」はなぜ必要か
・外国人の保護者から小中学校でなぜ「上履き」に
履き替える必要があるのかと聞かれたときに
どのように説明するかについてグループで考えて、
発表する
●日本語表現にとって「やさしい日本語」が持つ意味
・「やさしい日本語」に対する批判について考える
・日本語表現にとって「やさしい日本語」が持つ意
味を「プレイン・ジャパニーズ」という観点から
考える
○ワーク:「やさしい日本語」の理念実現のために
必要なこと
全体の講義内容を踏まえ、「やさしい日本語」の
理念実現のために必要なことを各自で考える
(時間があればその場で発表、なければ課題として
後日提出)
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いかがでしょうか。
これほど充実した内容は、他にありません。
と言いますか、誰より私自身が一番楽しみ
している次第(^_^)