絵カード使用の功罪-養成講座に蔓延る直接法原理主義。
篠研の「圧巻!日本語教育能力検定試験
直前対策オンラインセミナー」
(9月18日・19日開催)
にご参加いただいたY.Y様よりご感想を
頂戴いたしましたので、ご紹介いたします。
Y.Y様、セミナーご参加並びにご感想を
ありがとうございました。
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先日は長時間にわたったセミナー
ありがとうございました。
残り1か月、篠崎先生が常におっしゃって
いるように最後までやり切る。
悔いのないところまでやり切ったと胸を
張って、試験当日を迎えられるよう頑張り
ます。
別件になります。
私は420時間の養成講座の受講中で、
現在は初級学習者への模擬授業を中心に
学んでいます。
その中で気になることがあります。
直接法原理主義です。
篠崎先生はセミナーの中で何度も
おっしゃっていました。
授業中にわからない語彙が出てきたら
「ググりなさい」これが一番効率的で
学習者の納得感が高い。
わたしもそう思います。
私も模擬授業では、語彙コントロール
したティーチャートークを心がけて
います。
一方で先日、授業のキーワードとなる
未修語彙が出てきました。
この概念を入れた方が理解が早いと考え
たので、「ググりなさい」と指示しま
した。
そうするとクラスで大バッシング。
新出語彙は絵カードなどを使って説明
することこそ本筋。
「ググりなさい」とは何事。
学習者の母語と一対一対応しているわけ
ではないので誤解の危険がある。
そんな感じでした。
どうなんでしょうか。こういった考え方。
新出語彙の説明に時間をとられて、
導入すべき文型に時間が割けなくなる。
そんな本末転倒も現場では起きている
のではと考えざるをえません。
篠崎先生のお考えをお聞かせいただけ
ればと思います。
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まず、基本的にはY.Y様の考えで間違い
ありません。
> 学習者の母語と一対一対応しているわけ
> ではないので誤解の危険がある。
たしかにそれはあります。
ですが、それは絵カードでも同じこと。
例えば、下記絵カードを見て、それが
何を表しているか考えてみてください。
「漢字の勉強?」
「子供が宿題している?」
「漢字が書けない?」
「漢字が難しい?」
「国語の勉強?」
正解は、「忘れる」です。
こちらをご覧ください。
いかがでしょうか。
誤訳の可能性は、絵カードにはない
とは言えないのです。
むしろ、絵の解釈というのは、
見る者の世界観や文化的背景がかなり
影響しますので、
教師の意図とは異なる解釈をされる
可能性が高いんですね。
であれば、ネット翻訳をググッて
母語訳を見てもらった方がはるかに
誤訳をする可能性は低い。
誤訳の可能性が高いのは、多義語
が多いと思いますが、
それも、ネットの訳と例文を見ながら
どれが最もふさわしいかを考えさせ
ればいいし、
学習者が分からなければ、教師が
アドバイスをしてあげればいいのです。
以前、『みんなの日本語』著者の
田中よね先生のセミナーを受けたことが
あります。
田中先生曰く、
「皆さんは、新出語彙の導入を
絵カードを使ってやっていますか。
それは、誤解を生む可能性が高いので
やめた方がいいです。
一番いいのは、付属の『文法・翻訳』
の母語訳リストを使って意味の確認を
することです。
絵カードは、文型練習等のキューに
使ってください。」
その瞬間、数百人いた会場はどよめき
ました。
そりゃ、そうですよね(^_^)
ですが、『みんなの日本語』の著者ですら、
そのようにおっしゃっているのです。
逆に言うと、私たちは
「新出語彙の導入は絵カード一択」
という、かなり強力な先入観、固定観念
が刷り込まれていると言えます。
まさに、Y.Y様のおっしゃる
「直接法原理主義」。
学習者の中には(特に社会人)、
レッスン中に絵カードを使われると、
「子ども扱いされているようで嫌。
やめてほしい。」
と言う学習者もいます。
もちろん、絵カードを使うなと言って
いるわけではありません。
要は、語彙の導入方法は1つではなく、
いくらでもあるということ。
学習者のニーズや教師の好みによって、
一番いいものを選べばいいのです。
最も危険なのは、排他主義に陥ること
です。