実はおもしろい検定試験(なぜ「黄い」がないのか)。
日本語教育能力検定試験というのは、
実に日本語や日本文化について、
多くの気づきを私たちに与えて
くれます。
今回は、平成30年試験I問題1から。
試験I問題1といえば、日本語学の中から
基本的な言語現象や文法用語を、
5つの選択肢の中から正解を選ぶ一問
一答形式の問題。
極めて基本的な問題ですので、全問正解
したいところです。
で、今回はそのうち問題(10)。
実際の問題は以下の通り。
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(10)【イ形容詞の作り方】
1 青
2 黒
3 赤
4 黄
5 白
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シンプルですね。
この問題、実はこれまで何度か出題されて
います。
解法は、各選択肢をイ形容詞にしてみれば
一発でわかります。
1 青 → 青い
2 黒 → 黒い
3 赤 → 赤い
4 黄 → 黄色い
5 白 → 白い
4 黄だけ「色」という語を入れないと
イ形容詞になりません。
従って、答えは4番となります。
では、ここで問題。
「青い」のように、「色+い」の言葉は
「青」「黒」「赤」「白」の他に何が
あるでしょうか。
さあ、みんなで考えよう!
↓
↓
↓
↓
↓
↓
考えていますか?
↓
↓
↓
↓
↓
↓
答えは、「なーーーい!!」(^<^)
不思議ですね。
なぜ、「色+い」の言葉は、
「青」「黒」「赤」「白」しか
ないんでしょうか。
例えば、「青い」は語構成から言うと
生活に密着した基本語彙であり、かつ
単純語です。
基本語彙かつ単純語というのは、日本語
の成り立ちから考えると、割と成立初期
の段階からあると考えられます。
逆に、「黄色い」は、まず「黄」と
「色」という単純語がもともとあり、
それが、長い年月の末、
「『黄』と『色』をくっつけて『黄色』
って言葉を作ったら、いいんじゃね?」
みたいになって「黄色」という言葉
(=合成語)が生まれた。
その後、しばーーーらくたってから、
「そう言えば、『黄色』のイ形容詞が
ないから、強引に『黄色』に『い』
をつけて『黄色い』を作っちゃえ。」
みたいなノリで「黄色い」ができた
と考えられます。
このように考えると、「黄色い」は
「青い」や「赤い」より時代的に相当
後になってできたといえるわけです。
で、話を元に戻しまして、
なぜ、「色+い」の言葉は、「青」
「黒」「赤」「白」しかないのか。
ヒント、大相撲の吊り屋根。
よく見ると、吊り屋根の四隅から
それぞれ「青」「黒」「赤」「白」
の房のようなものが垂れ下がって
います。
これ、何の象徴でしたっけ?
これらは、天空の四方位を司る
四神で、
青房は東方を守護する青龍
白房は西方を守護する白虎
赤房は南方を守護する朱雀
黒房(紫または黒)は北方を
守護する玄武を表します。
また、これら四神は五行思想という
古代中国の自然哲学の思想にもある
もの。
さらに、五行思想は後に陰陽道と
結びついて陰陽五行説となるわけ
ですが、
これが日本に入ってきたのは、
西暦500年ごろ。
つまり、「青」「黒」「赤」「白」
が入ってきたのは、そのころと
考えられるわけです。
そのころは、おそらく色の識別も
上記4色しかなかったのでしょう。
今でも緑の信号を「青信号」と
言ってしまうのは、その名残なの
かもしれません。
てな話をセミナーでしたりするので
いつも、時間ギリギリになるわけ
ですが(汗。でもおもしろいでしょ(^_^))