実はおもしろい検定試験(「くださる」の命令形は?)
日本語教育能力検定試験というと、
巷では、
「ただただ難しく、
ただただめんどくさい試験」
のような言われ方をしているよう
ですが、そんなことはありません。
中には、
「検定試験に合格しても、
現場で使える教師にはならない。」
という方もいるそうですが、
そんな無礼千万な方には、
「それは、浅い勉強しかしていない
からです。
勝手に検定試験のせいにするな!」
と言いたい。
ここで声を大にしてお伝えしたいのは、
「検定試験は、日本語教師としての
共通言語を身につけるために必要
不可欠な試験であり、
なにより【授業ネタの宝庫】で
ある。」
ということ。
そして、さらに深掘りしてみてみると、
「検定試験は、実におもしろい
内容を含んだ試験である。」
ということ。
「おもしろい」には、
「興味深い」と「笑える」の両方の
意味を含みます。
そこで、今回は何回かにわたって
日本語教育能力試験のおもしろさ
(「笑える」重視)
についてご紹介しようと思います。
今回は平成27年試験III問題1問4。
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問題1
(問題文前半略)
加えて、これらの授受動詞の待遇表現も
D
複雑である。
(問題文後半略)
問4 文章中の下線部Dに関する記述として
不適当なものを、次の1~4の中から一つ
選びなさい。
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で、おもしろいのは、選択肢2。
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2 「くれる」の待遇形式「くださる」の
命令形は、「ください」という不規則
な活用形になっている。
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結論から言うと、この指摘は適当ですので
答えではありません。
おもしろいのは、ここから。
では、なぜ適当なのかというと、
まず、この「くださる」は、ナイ形が
「くださらない」(らない)なので五段
動詞。
通常、五段動詞の命令形は、例えば「書く」
で考えてみると、
「書く(kak・u)」→「書け(kak・e)」
つまり、語幹に「e」をつければ命令形に
なるわけです。
これを「くださる」に当てはめて考えて
みると、
「くださる(kudasar・u)
→「くだされ(kudasar・e)」
今どき、人にものを頼むときに「くだされ」
って言います?(笑)
もし、私が人から、
「悪いけど、テーブルの眼鏡、
取ってくだされ。」
って言われたら、思わず「御意!」って
言いそうです(笑)(すゑひろがりずかっ!)
なるほど、そう考えれば、当たり前に
使っている「ください」という言い方は、
たしかに不規則というか、例外的な活用形
であり、
これをちゃんと学習者に授業で教えないと、
特に歴史もののマンガにはまっている
学習者は、何の疑いもなく、
うっかりアルバイト先で、
「店長、体の調子が悪いので、明日は
休ませてくだされ。」
というかもしれない。
そして、そんなことを言った日には違う
意味で「大丈夫か。」と心配されてしまう
でしょう。
「『くださる』の命令形は、『くだされ』
ではなく、『ください』ですよ。」
と、しっかり教えてあげないと、
微妙なトラブルを招きそうでござ候(笑)