習得すべきは問題解決能力ではなく、問題●●能力(その2)。

前回のメルマガで、

「習得すべきは問題解決能力ではなく
 問題分別(ぶんべつ)能力であり、
 問題回避能力である。」

というお話をしました。

この能力が低い方は、いわゆる「いい人」
に多く、

往々にして他人の問題まで背負い込んで
しまう傾向にあります。

ですが、私は基本的に他人の問題を背負う
ことには賛成しません。

なぜなら、結果的にその人の成長の機会を
奪ってしまうことになるからです。

一言でいえば過保護なのです。

で、今回はその続き。

問題解決をする際に、よくやってしまう
間違い。

それは、

「問題の本質を見誤ってしまう。
 その結果、誤った解決策に走って
 しまう。」

ということ。

例えば、授業中、教師が説明しているのに
学習者同士がよく母語でぺちゃくちゃ話し
ているとします。

その時、教師がこの問題を、学習者が私語
をしている、不真面目だ、と判断し、

「人が話している時に、私語をするなど
 失礼だ。静かにしなさい。」

と言って、静かにさせたとします。

静かになったので、その教師は、

「やっと静かになった。真面目になった。
 これにて一件落着。」

と思うかもしれません。

ところが、学生が母語で喋った本当の
理由は、

「先生の説明がわからなかったので、
 となりの学生に聞いていた。」

かもしれないのです。

「もちろん先生に聞けばいいのかもしれない
 けれど、自分の日本語にも自信がないし、

 質問することで授業を中断してしまうのも
 恥ずかしい。

 急に先生に怒られてびっくりした。」

というのが、学習者の本音だったりするの
です。

問題の本質を見誤ったのが、ご理解いただけ
ましたでしょうか。

私は、問題の本質を掴む能力を

【問題把握能力】

と呼んでいます。

この場合、問題の本質は教師の説明が
学習者にとってわかりにくかった点。

学習者は決して不真面目なのではなく、
むしろ真面目に授業に取り組んでいる
証拠。

であれば、教師は「静かにしなさい」と
説教するのではなく、

もっとわかりやすいよう説明方法を考えて
みるとか、

学習者にキューやクイズ、質問を投げかけて
理解度を確認しながら授業を進めるとか、

授業改善に取り組んではじめて問題解決に
繋がるのです。

つまり、私たちは問題解決を図る前に、

そもそもその問題の本質がどこにあるのかを
見極める【問題把握能力】を身につけると
いうことが重要なんですね。

そこをしっかり身につけておかないと、誤った
解決策に走ってしまうことになるのです。
(もちろん解決しません。)

このように考えてみると、

日本語教師には、もちろん専門知識や
指導スキルも大事なのではありますが、

もっと基本的な部分でのコミュニケーション
能力が重要なのではないかと思うのです。


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