タイ人でも赤ん坊の頭をなでる人はいる。

異文化の人々と接する際に気を付けたい
ことの1つとして、

「タブーのジェスチャー」

というのがあります。

例えば、私がまだ駆け出しのころ、

日本語の授業で問題の答え合わせを
していたとき、

たまたま当てた学生が正解したので、

「OK!OK!」

と、親指と人差し指で円を作るジェス
チャーをしました。

日本人であれば、ごく普通にするもの
だと思います。

ところが、そのクラスにいたブラジル
人の女性がそれを見るや、いきなり、

「先生!やめてください!!」

と怒り出したんですね。

後でわかったことなんですが、

そのジェスチャー、ブラジルでは大変
卑猥な意味を表すのだそうです。

それ以来、私は「OK!」を表すとき、

親指を立て残りの指をグーにする
「いいね!」のジェスチャーをする
ようにしています。

このように、日本人にとっては何気ない
ジェスチャーも、

ある文化圏によってはタブー、下品、
あるいは何がしか相手に不快感を与える
ものがあります。

例えば、インドネシアでは相手に何かを
手渡すとき、決して左手(=不浄の手)
で渡してはいけないとか、

アラブ圏では、相手に自分の靴底を見せ
るのは相手を侮辱する意を表すとか。

これは、逆のことも言えるわけで、

例えば、韓国人が教師にプリントを渡す
際、よく片手で渡すことがありますが、

韓国では、これが相手への敬意を表す
ジェスチャーですし、

中国では、相手の指示に対して「ハイ!」
と1回答えるよりも

「ハイ!ハイ!」と2回返事で答えたほう
がより丁寧なのだそうです。

ですので、日本語教師は気を付けましょう
ね、という話。

実際、数年前の検定試験の問題に、

「タイでは、安易に子どもの頭をなでては
いけない。」

といった内容が出題されました。

仏教への信仰心が篤いタイでは、頭には
神が宿ると言われており、

そのため、安易に他人の頭に触ることは
相手が子供であっても、大変失礼なこと
だというわけです。

そこで、その真意を探るべく、

たまたまタイ人の学習者(女性。N1合格
者。)が私の授業を受けていたので、
聞いてみたところ、

「全然大丈夫っすよ。ふつーになでなで
しますよ(笑)」

え? そうなの?
(ってゆーか、「なでなで」って来た
か?笑。)

もちろん、彼女がタイのマナーを代表して
いるわけではないでしょうが、

でも、そういう感覚のタイ人もいるという
ことを、

私たちは、頭のどこかにおいておく必要が
あるのかもしれません。

タブーのジェスチャーに配慮しつつ、
変な先入観を持たない。

そこそこ緩く構えるぐらいがちょうどいい
のかもしれません。


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