「ダイグロシアなんて明日の授業に関係ない」という誤解。
いよいよ検定試験まで10日を切りましたね。
知識はしっかり仕上がっていますか。
今までの試験勉強を改めて振り替えてってみると、
「とりあえず試験勉強だから憶えたものの、
そもそもこんな知識、現場で何の役に立つの?」
と思いながら、仕方なしに憶えたものってあり
ませんか。
例えば、「言語と社会」の分野で頻出のダイグロシア。
「ダイグロシア(diglossia)とは、二言語変種併存
ともいい、ある集団内に2つの言語体系(あるいは
言語変種)が、同時に使用されている状況を言いま
す。
これは、ファーガソンが提唱したもので、ダイグロ
シアを形成している2言語のうち、社会的に高位
(High)にある言語をH言語、逆に低位(Low)に
ある言語をL言語といいます。」
-通信講座「篠研の日本語教育能力検定試験対策」
講義資料「No.090 言語接触・言語管理」より。
「試験に出るから憶えたけど、別に日本はダイグ
ロシアじゃないし、意味ねーっ。」
なんて(笑)
私も初めて試験を受けたときは、そんなことも
考えました。
「こんなの、単なる通過儀礼。上司が新入社員に
するマウンティングみたいなもの。意味なし!」
私も昔は、人並みにとんがってました(苦笑)
あれから25年。
今の私の認識は全く違います。
検定試験に出題される内容は、すべて明日の現場
に直結する、とびきりの優良情報ばかりです。
一見関係ないと思われるダイグロシアも例外では
ありません。
実は、日本にもダイグロシアに近い言語現象がある
のです。
それは、敬語です。
敬語が自然に正しく話せるかどうかで、人はその
人が教養のある人間かどうか、
もっと言うと、よりアッパークラスの人間かどう
かをやんわりと判断しているのです。
そして、こうした現象は日本に限らず、どこの国
・文化圏においても、大小あること。
そこで、私は中級以上で敬語の授業をするとき、
学習者にこう言って敬語学習の重要性を説きます。
私:皆さんは、日本語を勉強して将来いい仕事を
して、お金をいっぱい稼ぎたいと思っている
んでしょう?
だったら、どういう人を相手にビジネスをし
たらいいと思う?
学習者:お金持ち!
学習者の多くは、(いいか悪いかはともかく)
日本人よりはるかにお金に対して執着している
ので、こういう問いかけには敏感に反応します。
私:そうだよね。
じゃあ、お金持ちの人に好きになってもらう
ためには、どうしたらいいと思う?
学習者:難しい。わからない。
私:そうだね。お金持ちの人に認めてもらうという
のは、なかなか難しいよね。
でも、すぐにできる効果的な方法があるよ。
学習者:えっ!何ですか?
私:それは、お金持ちの人と同じ服を着て、
お金持ちの人と同じ言葉を話すことだ。
そうすれば、お金持ちの人は、皆さんを
自分たちの仲間だと思う。
そうすると、好きになってもらいやすいし、
ビジネスもしやすくなるんだね。
学習者:なるほど!!
実際、社会階層と言葉遣いに強い相関関係がある
のは、ラボフの研究などでも実証済み。
かくして、学習者は目をキラッキラさせて敬語の
勉強に励むわけですね。
「ダイグロシア」という言葉こそ授業では出しま
せんが、
ダイグロシアという言語現象の本質が分かって
いれば、こういう形で学習者のモティベーション
を一気に上げることもできるんですね。
だから、検定試験の勉強は、単に試験のための勉強、
上っ面をかすっただけの勉強では何の役にも立たな
くて、
やはり、本質的なところまで入り込んだ勉強こそが
一生の財産になるのです。
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