適応曲線と「ノーペイン、ノーゲイン」。
適応曲線と言えば、皆さんおなじみのこれですね。
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これに英語のことわざ
「ノーペイン、ノーゲイン(no pain no gain)」
をかぶせて考えると、実に普遍性の高い概念で
あることに気づかされます。
この諺は、「痛みなくして、得るものなし。」と
いう意味。
適応曲線のつかの間のハネムーン期の後にやってくる
急転直下のカルチャーショック。
これって、まさに精神的な「痛み」ですよね。
特に、多くの日本語教師が教える、日本語学校生や
大学の留学生というのは、多かれ少なかれこの「禊ぎ」
とも言うべきカルチャーショックを経験します。
ストレスがたまって精神的に不安定になったり、
ホームシックになったり、体重が増えたり。
しかし、その禊ぎ期間も永遠には続かず、異文化に
適応していくにつれて徐々に回復していきます。
これが、適応段階(回復期)。
この時期になると、異文化での身のこなし方も心得る
ようになり、
視野も広がり、より視点の高い考え方ができるように
なり、
そして何より一回りも二回りも人間的に大きくなる。
これは何物にも代えがたい本当に大きな財産です。
ここで、とても大事なことがあります。
それは、適応段階(=得るもの)の前には必ずカル
チャーショック(=痛み)があるということ。
カルチャーショックもなしに、スムーズに異文化に
適応するなどという虫のいい話はありません。
(稀にそういう人もいますが、そういう人は、また
別の場所で大きなショックを受けるものです。)
にもかかわらず、痛むことを嫌って、得ることだけを
考える「クレクレ星人」のいかに多いことか。
また、カルチャーショックを受けたからといって、
その後に必ず回復するという保証はどこにもないと
いうことも大事なポイント。
回復せずにそのまま潰れてしまうというリスクだって
あるのです。
そうしたリスクを覚悟したうえで異文化に接し、
途中で逃げることなく、無我夢中でやりきれば、
晴れて適応段階に進むことができるわけですね。
まさに、「ノーペイン、ノーゲイン」。
ですが、これは異文化適応に限ったことではあり
ません。
▼望む仕事を得たい場合も
▼資格試験に合格したい場合も
▼好きな人と一緒に暮らしたい場合も
▼キャリアアップをしたい場合も
望むものが手に入る保証はどこにもないということ
を前提に、
手に入れるために必要な【痛み】、すなわち経済的、
肉体的、精神的な負担やリスクを事前に甘受すると
いうことが必要で、
その覚悟がなければ、決して得ることはできないの
です。
その覚悟もないのに、欲しいものだけ手に入れよう
など愚の骨頂。
神様から
「楽して結果なんか出るか!ボケッ!」
と一蹴されて終わりです。
少なくとも、目の前の学習者は遠い異国からそれ
だけの【痛み】を覚悟で(いや、すでに受けながら)
日本にいるわけで、
そうした彼らの立場を深く理解し、共感し、
そして、彼らから信頼される教師になるためには、
私たち自身も、
「ノーペイン、ノーゲイン」
という普遍的真理の沿った思考と言動を身体知レベルで
身につけるべきではないか、と思います。
もちろん、痛みを受けない生き方もありますし、
それを否定するつもりはありません。
しかし、そういう人生は、結局のところ、
「何も得るもののない人生」
であるということを心得ておく必要があります。