「昼食」の語彙導入で使えるちょっとトリッキーなボキャビル。
『中級から学ぶ日本語』の第16課「がんばる」の
「新しい語彙」に「昼食」が出てきます。
実は、このテキスト、最近三訂版が出され、
確認したところ、「がんばる」の課は削除
されていました。残念。
ただ、この語彙自体は中級でよく出てくるもの
ですので、気を取り直してご紹介したいと思います。
さて、この「昼食」、新出語彙として導入する際、
どのように学習者に提示しますか。
「篠研の検定試験対策講座」では、
「初中級の指導法」と「レベル別語彙指導法」で、
中級語彙指導のポイントを以下のように紹介して
います。
1.表記・読み方
2.品詞・語構成
3.要求する格助詞
4.共起表現
5.反対語・類義語
6.動詞の自他
7.動詞の活用
8.丁寧さ
9.書き言葉か話し言葉か
10.男言葉か女言葉か
このうち、今回の「昼食」に関係するのは、
1.2.5でしょう。
特に中級は語彙の豊富さが日本語力に直結
しますので、
新出語彙を手掛かりに、できるだけ多く
しかも無理なく関連語彙を学ばせたいものです。
そうすると、すぐに思いつく関連語彙は、
朝食
夕食
夜食
ではないでしょうか。
中には、「間食」をあげる方もいらっしゃるかも
しれませんね。(それもよし。)
ただ、授業では教師が一方的に説明しても学習者が
理解したかどうかわかりませんので、
学習者と密にコミュニケーションをとりながら、
(これをインタラクションといいますね。)
授業を進める必要があります。
概ねこのような感じです。(Tは教師、Lは学習者。)
======ここから==================
T:お昼に食べるのは「昼食」。では、朝に食べるのは?
L:朝食(ちょうしょく)。
T:そうですね。(「朝食」をルビ付きで板書。)
(板書)
朝食 - 昼食
T:では、夜に食べるのは?
L:夜食(よるしょく)???
T:惜しいですね。「夜食」は「やしょく」と読みます。
(「夜食」をルビ付きで板書。)
でも、「夜食」は夜遅く食べます。
夜11時とか1時とか。
だいたい寝る前に食べます。
昼食の次に食べるのは、何食ですか?
(板書)
朝食 - 昼食 - - 夜食
 ̄ ̄ ̄
L:夕食???
T:そうです。夕食ですね。(「夕食」をルビ付きで板書。)
(板書)
朝食 - 昼食 - 夕食 - 夜食
 ̄ ̄ ̄ ̄
======ここまで==================
だいたいこのような感じでしょうか。
もちろん授業にも尺がありますので、
これでこの語は切り上げ、次の語彙に移ってもいいのですが、
私なら、余裕があればさらにこう続けます。
======ここから=================
T:日曜日、私は起きるのが遅いです。
なので、朝食と昼食、2回食べません。
11時ごろに1回食べるだけです。
この食事を日本語で何といいますか?
======ここまで=================
こう言われると、学習者はどう思うでしょうか。
今まで朝食、昼食、夕食、夜食ときているので、
今度もきっと「●食」だろうと考える確率が高いです。
実際、私がやった授業では、学習者は「中食」
「朝昼食」など無理やり言葉を作っていました。
そこで、学習者からの答えが出尽くしたところで、
答えが「ブランチ」であることを言うと、
学習者から「あぁ、そうか。」という声が
出てきて、みんな納得。
ちょっとトリッキーですね(^_-)v
でも、こうした出し方をするとエッジの効いた
授業が演出できて、学習者の頭にも知識が
残りやすい。
ついでに、カタカナ語の場合、すぐに板書せず
ディクテーションさせると聞き取りの練習にも
なります。
実際学習者に書かせると、
ブラーチ
プラッチ
プラーチ
ブーラチなど
いろいろ書いてきます。
「昼食」だけでもこれだけ広がりのある語彙指導が
できるんですね。
試してみてくださいね。
(中級語彙指導セミナーでもやってみるかな。笑)