とりたて助詞とは。
通信講座「篠研の日本語教育能力検定試験」
講義資料「No.017 助詞各論」より。
今回は、いつもとちょっと趣向を変えて、通信講座の
講義資料の一部を少しだけご紹介します。
とりたて助詞が苦手な方は、以下の文を何回も読んで
しっかりインテイクしてくださいね。
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とりたて助詞とは、
「ほかの要素との関係を背景に、文中のある要素に焦点を当て、
並列・極限・限度・対比・評価・ぼかしの意味を表わす助詞」
(日本記述文法研究会(2010)p.113)
をいいます。
格助詞と違い、文の必須要素ではないため、なくても文が成り
立つ点、また、ある種の暗示的意味を付加する点に特徴があり
ます。
例えば、「彼【も】犯人だ。」という場合、彼が犯人であることと
同時に「彼以外にも犯人がいる。」ということを暗示しています。
また、格助詞と異なり、
「聞く【も】涙、語る【も】涙」
「彼は大きい【だけ】で力がない。」
「のんびり【ばかり】もしていられない」
など、名詞だけでなく動詞、形容詞、副詞などの品詞にもつく
ことができます。
実際の教育現場においては、とりたて助詞は概ね初級で指導され
ますが、その細かな使い分けについては、中級で指導されること
が多いようです。
従って、使用するテキストでどのように扱われているかを予め
確認しておく必要があります。
(以下、各とりたて助詞の意味用法は省略)
■格助詞との共起関係
ここではとりたて助詞から見た格助詞との共起関係について
みていきます。
特に、格助詞との共起関係では、共起の有無だけでなく前に接
続するか後ろに接続するかが問題になります。
まず、話し言葉で省略されやすい格助詞(特に「が」「を」)は、
とりたて助詞と共起する際にも省略されることがあります。
(46’)私(が も *がも)日本人です。(*は非文を表す。)
ただし、「だけ」「ばかり」「こそ」「まで」「なんか」「など」
でとりたてる場合、格助詞「が」「を」がとりたて助詞の後に現れ
ることがあります。
(78)子ども【までが】私をばかにする。
(79)私【などが】このような立派な賞をいただいていいので
しょうか。
また、ニ格、デ格、ト格、カラ格、へ格などの格成分がとりたてら
れる場合は、格助詞の後にとりたて助詞がつくことが多いです。
(80)家【にも】会社と同じ機種のパソコンがある。
(81)娘は同じ年ごろの女の子【としか】いっしょに遊ばない。
ただし、「だけ」「ばかり」「なんか」「など」「くらい」は、
格助詞の前に現れることがあります。