主張のない仕事はしない。
今日の実習授業は、前半は実習生(日本人)が、
後半は、私篠崎がやりました。
前半では、
1.相手の意見を受け入れて自分の意見を言う。
2.人間関係を壊さないように話す。
を目標に、
「そりゃ、そうだけど」
「そうかもしれないけど」
「確かにそれもそうですが」
「確かに~だけど、~とは限らないよ」
といった表現を学習した後、
「夏休みにどこに行くか友達と相談する。」
というロールプレイ。
なかなかそつなくできました(^_^)
そして、それを受けて後半は、白熱した議論の中
でも相手に配慮した言い方ができるようにという
ことで、
【ディベート】
を実施。
テーマは、
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仕事で優先するべきは?
A.人間関係
B.職務
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(__c23__さんはどちらですか?)
ちなみに、ディベートのテーマは、価値観の違いが
あぶり出るようなものにするのがコツで、
テーマを考える際には、下記書籍が大いに参考にな
ります。
『多文化世界 — 違いを学び未来への道を探る』
https://amzn.to/2ZBEMyv
篠研の通信講座をご受講の方は、お分かりですね(^_^)
で、ディベート活動の手順は、以下の通り。
1.まず、実習生と留学生がちょうど半々にな
るように、自分の考えに沿ってA派とB派
2つのグループに分ける。
2.A派にはB派支持派に、B派にはA派支持
派になってもらう。つまり、自分の考えと
は違う立場でディベートに参加する。
理由は、自分の考えとは異なる考えの立場
で物事を考えてもらうため。
3.各グループで、各派を支持する理由、予想
される相手の派からの反論、その反論に対
する逆反論を考え、ワークシートに記入す
る。
4.ディベート開始。審判員(篠崎)の指示の
もと、各グループ交互に意見を言い合う。
5.どちらが勝ったか審判員(篠崎)が判定す
る。
ポイントは、2の自分の考えとは異なる立場に
立つというところです。
こうした仕掛けを仕込んでおくことによって、
自分の考えとは異なる考え方にも相応の理があ
るということを肌感覚で理解することができる
のです。
で、通常、授業は5まで進んで、学習者は
「勝って嬉しい/負けて悔しい」
となって、教師の方も
「ディベートで勝つために、効果的な意見の
言い方や談話構成、必要な表現などを、こ
れからもしっかり勉強しましょうね。」
となって、授業は終わりとなるところ。
ですが、ここで終わったら単なる語学の授業。
驚きも、発見も、感動も、共感も、何もありま
せん。
そこで、私はパワーポイント資料の一番最後に
以下のようなスライドを追加し、授業の最後に
プレゼンしました。
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ディベートから学べること
1.世の中には、いろいろな考え方を持つ人がいる。
自分の考え方が正しいとは限らない。
2.自分の考えとは違っていても、相手の意見を聞
くことが相互理解のためには大事。
3.多文化共生社会を作るためには、自分と異なる
考え方を受け入れる寛容さが大切。
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つまり、
「今日勉強したことの先には、多文化共生社会の構築、
さらにその先には世界平和があるんですよ。
そのための1つの手段として日本語の勉強があり、
人間関係を配慮しながら意見を言うというスキル
があり、
それを支えるためのさまざまな言語表現があるんで
すよ。
今日勉強したことは、それだけ理想的な社会の構築
につながることなんですよ。」
というメッセージなんですね。
実は、わざわざ2のような仕掛けを入れたのも、この
3点を身体知レベルで理解してほしかったから。
このメッセージが加わることで、授業の価値、意義が
一気に高まるんですね。
私の仕事に対する信条の1つに、
「主張のない仕事はしない。」
というのがあります。
「そもそも何のためにそれをするのか。」
「それをすることで、何が変わるのか/何を目指しているのか。」
「その結果、どうなるのか。」
やる気のない学習者というのは、そもそもこの
根本的なところで腹落ちしていないから、やる気
が起きないのです。
逆にそういう根本的なところを、笑いあり涙ありで
伝えながら、
【驚き、発見、感動、共感】
を伴った授業を展開すれば、
「学習者が前のめりにならないはずはない」
と思うのですが、いかがでしょうか。