『日本語教育の推進に関する基本的方針』を読む(その4)

『日本語教育の推進に関する基本的方針』を読む

の第4回目です。

報告書はこちら。

日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進
するための基本的な方針の閣議決定について:文化庁
https://bit.ly/3hTmIai

今回は、

「第2章 日本語教育の推進の内容に関する事項」

の1回目。

「1 日本語教育の機会の拡充
(1)国内における日本語教育の機会の拡充
ア 外国人等である幼児,児童,生徒等に対する日本語教育」

についてみていきます。

本報告書を報道したメディアの多くが、この外国人児童生徒に
対する日本語教育について触れていました。

それだけに、どのような内容なのか興味の沸くところです。

では早速。

以下、引用。

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第2章 日本語教育の推進の内容に関する事項

1 日本語教育の機会の拡充

(1)国内における日本語教育の機会の拡充

ア 外国人等である幼児,児童,生徒等に対する日本語教育

我が国に在留する外国人が増加する中,学校に在籍する外国
人の子供の数も年々増加している。

また,国際結婚家庭を中心に,日本国籍ではあるが日本語能力
が十分でない子供も増加しており,

複数の言語環境にあって日本語指導が必要な児童生徒は合わせ
て5万人を超える状況となっている。

さらに,出身国の多様化を背景として,これらの児童生徒の母
語についても多言語化が進んでいるほか,

特定の地域への集住化の傾向が見られるなど,外国人児童生徒
等をめぐる状況については従前にも増して複雑な様相を呈して
いる。

加えて,令和元年度に初めて実施された調査結果では,約2万
人の外国人の子供たちが就学していない可能性がある,

又は就学状況が確認できていない状況にあるという実態が明ら
かとなった。

子供たちが生活の基礎を身に付け,その能力を伸ばし,未来を
切り拓ひらくことができるようにするためには,適切な教育の
機会が確保されることが不可欠であり,

外国人等の子供の就学促進,学校への受入れ体制の整備,日本
語指導・教科指導,生活指導,進路指導等の充実のために必要
な施策を講ずる。

その際,母語・母文化の重要性や,保護者への教育に関する理
解促進についても留意する。

また,こうした施策を通じて,日本人と外国人の子供が共に学
ぶ環境を創出することにより,

国際的な視点を持って社会で活躍する人材を育成するとともに,
活力ある共生社会の実現に資する。

【具体的施策例】

・外国人児童生徒等の公立学校における受入れ・支援体制を充
実させるため,

日本語指導に必要な教員定数の義務標準法(公立義務教育諸学
校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(昭和36年法
律第116号))の規定に基づいた着実な改善を進めるとともに,

日本語指導補助者や母語支援員の養成,活用など地方公共団体
における指導体制の構築を支援する。

また,初期集中支援等の取組や多言語翻訳システム等のICT
を活用した支援,

日本人と外国人が共に学び理解し合える授業の実施や母語・母
文化に配慮した取組,地域の関係機関との連携等を推進する。

・系統的な日本語指導を実践するための体制を整備するととも
に,外国人児童生徒等の教育に携わる教員等の資質能力の向上
を図るため,

養成段階における取組を推進するほか,地方公共団体等が実施
する研修の充実や,研修指導者の養成等の支援を行う。

特に,幼児教育段階においては,幼児期の発達の特性に留意し
た指導の充実が図られるよう取組を推進する。

・中学校,高等学校において,将来を見通した進路指導が提供
されるよう,外国人生徒等へのキャリア教育等の包括的な支援
を進める。

また,全ての都道府県において,公立高等学校入学者選抜にお
ける帰国・外国人生徒等の特別定員枠の設定等,特別な配慮が
図られるよう促す。

・障害のある外国人の子供が適切な教育を受けられるよう,特
別支援教育の担当教師が,外国人の子供に係る支援について学
ぶことのできるよう必要な措置を講ずる。

・全ての外国人の子供の就学機会が確保されることを目指し,

住民基本台帳部局,国際交流部局,福祉部局等の行政機関内及
びNPOや外国人学校といった地域の関係機関との連携を図り
つつ,

地方公共団体における就学状況の把握や保護者への情報提供,
就学促進のための取組を促進する。

また,就学機会の確保のために,地方公共団体が講ずべき事項
を指針として策定する。

・学校における,日本人を含む全ての児童生徒等が,我が国の
言語や文化に加えて,多様な言語や文化,価値観についても理
解し,

互いを尊重しながら学び合えるような環境づくりの取組を促進
する。

・夜間中学は,生徒の約8割を外国籍の者が占めており,

本国や我が国において義務教育を十分に受けられなかった者に
とって,社会的・経済的自立に必要な知識・技能等を修得し得
る教育機関である。

このため,教育機会確保法(義務教育の段階における普通教育
に相当する教育の機会の確保等に関する法律(平成28年法律第
105号))や第3期教育振興基本計画等に基づき,

全ての都道府県や指定都市に少なくとも一つの夜間中学が設置
されるよう新設準備に伴うニーズの把握や設置に向けた取組の
支援,

地方公共団体向けの研修会の開催や広報活動の充実を通じてそ
の促進を図る。

・幼児,児童,生徒等を含む外国人等の日本語教育環境を強化
するため,都道府県及び指定都市が行う地域日本語教育の総合
的な体制づくりを推進する。

また,幼児,児童,生徒及び保護者等を含む外国人等に対する
地域における日本語の学習機会を確保するための取組及びIC
Tを活用した遠隔教育等の先進的取組を支援する。

=============================

具体的施策の中に

「日本語指導に必要な教員定数の義務標準法(公立義務教育諸学
校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(昭和36年法
律第116号))の規定に基づいた着実な改善を進める」

という文言がありますが、これは何かといいますと、

同法律第七条第六項を踏まえた記述です。

同法律第七条というのは、副校長、教頭、指導教諭等々の、児童数
に応じた数を定めた条項で、

そのうち第六項では、配置すべき日本語教師の数を以下のように
定めています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

六 小学校(義務教育学校の前期課程を含む。)又は中学校(義務
教育学校の後期課程及び中等教育学校の前期課程を含む。)におい
て日本語を理解し、使用する能力に応じた特別の指導であつて政令
で定めるものが行われている児童又は生徒の数にそれぞれ十八分の
一を乗じて得た数の合計数

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

つまり、外国人児童生徒18人につき、1名日本語教員を配置せよと
いうことなんですね。

ただ、1校に18人以上の外国人児童生徒が在籍する小中学校という
のは、全国的にはかなり少数派で、多くは5人未満。

このように外国人児童生徒数が5人未満の学校を散在校といい、
そうした地域を散在地域といいますが、

こうした地域の外国人児童生徒に対する日本語教育をいかに充実
させていくかが大きな課題といえます。

「日本語教師を増やして、各自治体に配置すればいいじゃないか。」

と思われるかもしれません。

もちろんそれができればそれに越したことはないわけですが、
人を雇うとなれば、当然人件費がかかりますし、

一度雇った以上は、基本的に最低1年は雇用しなければ、教師希望
者もなかなか出てこないでしょう。

ましてや、外国人児童生徒が数人で、その数人もいついなくなるの
か分からないとなれば、

ただでさえ予算がひっ迫している地方自治体においては、なかなか
計画的に進めることができないのです。

そこを、国がどれだけバックアップするかが大きな鍵。

ただお金を出せばいい、ただ音頭を取ればいいというのではなく、
地域の教師養成や体制づくり、地域住民とのかかわりにも積極的に
かかわっていかなければ、

地方自治体に丸投げしても、もともとノウハウのないところは、
なかなか身動きが取れないのではないかと思います。

皆さんは、どのように感じられましたでしょうか。


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