コロナ終息後のリエントリーショックを見据えた授業運営を(その1)
リエントリーショックといえば、検定試験では
お馴染みの適応曲線の一局面ですね。
異文化接触が終わり、いよいよ母文化に戻る。
異文化接触期にさんざん苦労したり、適応に向け
た努力をしたりしたこともあって、
母文化に戻るときには、
「あぁ、やれやれ。」
とばかりに安心、安堵、そして期待値が上がる
わけですね。
ところが、実際に母文化に戻ってみると、
「えぇ!俺の国ってこんなんだったっけ!」
とばかりに、あらためてカルチャーショックを
受けてしまう。
例えば、日本の飲食店のサービスに慣れてしまった
外国人が、母国の飲食店の店員の対応の悪さに幻滅
してしまうなどはよくあることです。
別にその国が変わったわけではありません。
異文化環境で生活して中で、適応という形で自分
自身の価値観やライフスタイルや考え方が変わった
んですね。
ですが、往々にして本人はそんな自覚はありません。
だからこそ、リエントリーショックを受けてしまう
のです。
実は、このことは異文化接触に限ったことでは
ありません。
例えば、今回の新型コロナウィルスに伴うオンラ
イン授業でも、同様のことが起こりえます。
通常、日本語教育機関では、決まった時間割に
沿って対面式授業をしてきたことでしょう。
ところが、現状ではそれがままならず、オンライン
で授業をしているところが多いと思います。
中には、ZOOMといったテレビ会議システムではなく、
レポートなり問題なり、何か課題を出して課題提出を
もって出席と見なしたり、
予め講義を授業で撮っておいて、学習者が自由に
閲覧することで授業出席と見なすところもあるのでは
ないでしょうか。
(ちなみに、こうした授業形態をオンデマンドといい
ます。)
最初は、教師も学習者もこうした授業方法に戸惑っ
たり、システムの不具合等、予期しないトラブルの
対応に時間がとられ、
ストレスを感じることも多かったものの、次第に
そうした授業の仕方にもだんだん慣れ、
今では、
「こっちの方が、わざわざ学校まで行かずに済むから
いい。」
「かつてのように時間割に縛られず、勉強したい時に
勉強できて、とても自由だ。」
といった感じになっているのではないでしょうか。
このプロセスは、まさに適応曲線でいうところの、
カルチャーショック期からの適応期に符合します。
つまり、意識していないかもしれませんが、
この2~3か月で私たちは、オンライン授業という
文化に適応してきたわけですね。
これ自体、決して悪いことではありません。
むしろ、未だに適応できずに拒否反応を示している
方が問題です。
ですが、このままいい感じで進むと考えるのは
かなり楽観的です。
コロナが終息し、かつての対面式授業に戻った時、
私たちは、新たなカルチャーショック、すなわち
【リエントリーショック】
を味わうことになるのです。
続きは次回に。