教授アプローチは、最も波及効果の高いいわば「社訓」。
検定試験では、
・オーディオリンガル・アプローチ
・コミュニカティブ・アプローチ
・ナチュラル・アプローチ
といった
「●●アプローチ」
というのを必ず勉強します。
例えば、オーディオリンガル・アプローチ
であれば、
「言語は、習慣形成によって学習する。」
であり、
コミュニカティブ・アプローチであれば、
「言語学習は、コミュニケーション能力の
養成である。」
ですね。
で、これらのアプローチはどれも一見非常に
抽象的で漠然としているためか、
日本語教師の勉強をしている方の中には、
「どうしてこんな明日の授業の役に立たない
ことを、検定試験でことさら勉強するのか。
こんな抽象的なことを勉強することに
いったい何の意味があるのか。」
と言われる方がいらっしゃいますが、
教授アプローチとその教授理念は、
実は、教育現場でむちゃくちゃ重要です!
なぜなら、日々の指導のすべてに影響を
与える、最も波及効果の高いものだからです。
私たちは日々、教育現場で日本語指導をする
わけですが、
その中でさまざまな意思決定をします。
「意思決定」というと、「重大な事柄の決定」
というイメージをお持ちかもしれませんが、
決してそれだけではありません。
▼どんな学習目標を立てようかな、とか
▼どの教材を使おうかな、とか、
▼この教材をどれくらいのペースで進めよう
かな、とか、
▼コース全体で何を教えようかな、とか
▼どんなシラバスで指導しようかな、とか
▼1課をどんな手順で進めようかな、とか、
▼今日の授業ではどんなレアリアを使おうか
な、とか、
▼どんな活動を入れようかな、とか
▼この文型をどんな場面設定で導入しようか
な、とか
▼今日の授業はどんな話題から話そうかな、とか
▼プリント作ったほうがいいかな、とか
▼今日が学生とどんな話をしようかな、とか
▼今日の授業はどんな服を着ていこうかな、とか
▼学生の質問にどう答えようかな、とか
▼宿題を出そうかな、とか
▼あの学生に会ったらちょっと励ましてあげよう
かな、とか
▼授業の準備は後でしようかな、とか、
(まだまだ半永久的につづきますが、ここまで。)
とにかく、私たちは大小含めて時々刻々と
意思決定をしているのです。
その際に、組織であれ個人であれ、その
意思決定の判断基準にブレが生じたら
どうなるか。
指導に一貫性が出ず、成果も期待できない
でしょう。
そればかりか、最悪現場に混乱を招き
学習者の信頼を失うことになるでしょう。
従って、指導に一貫性を持たせ、最大の
成果を生み出すためには、
意思決定が、確とした理念に沿ったもの
であり、
常にその理念に紐づけられるような形で
判断しなければならないのです。
逆に、理念としてしっかりした教授アプローチが
カチッと固まっていれば、
▼それに沿って、学習目標を設定し、
▼それに沿って、シラバスを確定し、
▼それに沿って、カリキュラムを策定し、
▼それに沿って、日々の授業を実践し、
▼それに沿って、学習者をサポートする
と、一貫した教育ができるのです。
このように、教授アプローチは、
日々の指導に隅々にまで影響を与える
非常に波及効果の高いものなのです。
それは、まるで会社の「社訓」。
理念としてしっかりした「社訓」が
カチッと固まっていれば、
上司が社員一人一人にいちいち指示を
出さなくても、
社員一人一人が自ら考え、「社訓」に
沿って同じ方向を向いて行動し、
結果、、活動に一貫性が生まれ、
最大の成果を生み出すことが
できるわけです。
日本語指導をしていて、教授アプローチ
ほど重要なものはないのです。