「総合的対応策(改訂)」を読む(15)。
「総合的対応策(改訂)」を読む。
今回は、15回目。
「総合的対応策(改訂)」とは、下記報告書
を言います。
「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(改訂)」
http://www.moj.go.jp/content/001311603.pdf
今回は「II 施策」のうち、
「4 新たな在留管理体制の構築」
の2回目。
「 (3) 留学生の在籍管理の徹底」
です。
この話題は、多くの方に直接関係することでは
ないかと思います。
特に、日本語学校の専任の先生方にとって
留学生の在籍管理の徹底は至上命題。
それだけに、国がこれからどれくらいのレベルで
この課題に取り組もうとしているのかを知ることは、
必須と言えるでしょう。
四の五の言わずに、早速見ていきましょう。
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(3) 留学生の在籍管理の徹底
【現状認識・課題】
就労目的の留学生や在籍管理が不十分な教育機関の存在が
指摘されているところ、
本年6月に策定した留学生の在籍管理の徹底に関する新た
な対応方針を着実に具体化していくとともに、
本年8月に改正を行った日本語教育機関の告示基準を適切
に運用するなどして、
日本語教育機関の適正化や質の向上及び留学生の在籍管理
の徹底を図っていく必要がある。
【具体的施策】
○ 令和元年に見直しを行った在留資格「留学」に係る在
留資格認定証明書交付申請の際の提出資料及び地方出入国
在留管理局における日本語教育機関の適正性判断について、
まずは確実かつ厳格な運用に努める。
〔法務省、文部科学省〕《施策番号 151》
○ 日本語教育機関の告示基準の改正により、告示基準適合
性についての定期的な点検
及び点検結果の報告等の義務付けや告示から日本語教育機関
を抹消する基準の追加等が行われたことから、
地方出入国在留管理官署において、日本語教育機関に対し実
地調査等を行い、
告示基準適合性に係る点検結果報告の適正性について確認し、
必要な指導を行い、
なおも改善がみられない場合等は、告示から抹消する等の厳
格な処分等を行い日本語教育機関の適正化を図る。
また、当該調査においては、ICTにより記録された出席率
等を基に、その適正性について的確な判断を行う。
〔法務省、文部科学省〕《施策番号 152》
○ 検挙された留学生について、その通っている日本語教育
機関が判明した場合に、
警察庁が法務省及び外務省に対して当該日本語教育機関の情
報を提供し、
法務省において当該情報を日本語教育機関に対する調査等に
活用するとともに、
外務省において査証審査に活用する取組を更に推進する。
外務省は、査証審査等により判明した、要件を満たさない留
学生に係る日本語教育機関の情報を法務省等に提供し、
法務省は、当該情報を日本語教育機関に対する調査等に活用
する。〔警察庁、法務省、外務省〕《施策番号 153》
○ 留学生が我が国で就職して活躍するための前提として、
留学生が学業に専念し、
高度な専門性・技術や日本語能力を身に付けて適正に課程を
修了することができるよう、
高等教育機関の質の確保と留学生の適正な管理が求められる。
このため、各大学、高等専門学校、専修学校に対して留学生
の適切な受入れ及び学業成績や資格外活動の状況等の的確な
把握や適切な指導等の在籍管理の徹底を求めるとともに、
出入国在留管理庁と情報共有の上、在籍管理が不十分な大学
等に対し、連携して実態調査及び指導を実施することで、
留学生の在籍管理について更なる徹底を図る。
〔文部科学省〕《施策番号 154》
○ 留学生の在籍管理状況の迅速・的確な把握と指導の強化を
行う。
また、指導の結果、在籍管理の適正を欠く大学等については、
改善が認められるまでの間、原則として、留学生の受入れを
認めない等の在留資格審査の厳格化を図る。
あわせて、在籍管理の適正を欠く大学等に対する私学助成の
減額・不交付措置や大学等名の公表等の制裁を強化する。
〔法務省、文部科学省〕《施策番号 155》
○ 専ら日本語教育を行う留学生別科について、日本語教育
機関の告示基準に準じた基準を作成し、
当該基準への適合性の確認を受けている留学生別科のみ留学
生の受入れを認める仕組みを構築する。
加えて、非正規生等について、大学学部進学のための予備教
育に受け入れる場合には、
留学生別科に係る新基準によるものを除き、在留資格を認め
ない仕組みを構築する。
〔文部科学省、法務省〕《施策番号 156》
○ 文部科学省、地方出入国在留管理官署及び都道府県との
情報共有等の連携の枠組により、
在籍管理が不適切な専門学校が判明した場合には、大学の場
合と同様、
原則として、留学生の受入れを認めない等の仕組みを構築す
る。〔文部科学省、法務省〕《施策番号 157》
○ 各種民間試験実施団体が実施する日本語教育機関へ入学
するための日本語試験について、
各試験団体と連携し、地方出入国在留管理官署提出専用の証
明書を作成する仕組みの他、
各試験団体が地方出入国在留管理官署からの照会に応じるな
どの仕組みを構築し、厳格な審査を実施する。
〔法務省〕《施策番号 158》
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これまでの戦後の日本語教育の歴史を振り返ってみると、
留学生受入れ10万人計画や30万人計画の達成前後で、国の
留学生政策は大きく変化してきた経緯があります。
つまり、計画達成前は、まさに計画を達成すべく、在籍
管理よりも受入数の増加を優先させ(結果、さまざまな
問題が起こり)、
計画達成後は、「質の転換」を謳って、引き締め策を
打ち出す(結果、民間の教育機関の経営を圧迫する)。
これまで多くの日本語教育機関が、この施策の変化に
翻弄されてきたわけです。
と同時に、そのすきを狙っていわば金儲け主義的な教育
機関の存在を許すことになったのも事実。
在籍管理を徹底するのは大いに結構ですが、本気で国造り
を目指すのであれば、
10年、20年、数10年という長期的スパンで、一貫性のある制度
運用をしていただきたいと思います。
皆さんは、どうお考えになりましたでしょうか。