「総合的対応策(改訂)」を読む(2)。

前回から始まりました
「総合的対応策(改訂)」を読む。

今回は、その2回目。

「総合的対応策(改訂)」とは、下記報告書
を言います。

「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(改訂)」
http://www.moj.go.jp/content/001311603.pdf

前回も熱弁をふるいましたが、この報告書は
戦後日本語教育の

【第3の波】

ともいえる現状の端緒となる超重要な報告書。

検定試験対策だけでなく、今後の日本語教師としての
キャリア形成においても、押さえておくべきでしょう。

というわけで、早速本文を読んでいきましょう。

今回は、「I 基本的な考え方」です。

この部分は一見読み飛ばされがちなのですが、こういう
所こそしっかり読んでおく必要があります。

なぜなら、ここには、

▼背景の状況、現状把握
▼これまでの経緯
▼現在の課題と問題意識
▼将来のビジョン
▼当事者の意気込み

など、とっても重要な内容が含まれているからです。

実際、「I 基本的な考え方」を読むと、なるほど
「総合的」というだけあって、国内在住外国人を
一手にカバーしようという姿勢が感じられますし、

なにより国の本気度がひしひしと伝わってきます。

そのあたりを感じていただければと思います。

では、全文を。

==========================
I 基本的な考え方

近年、我が国を訪れる外国人は増加の一途をたどっている。

平成 24 年に 836 万人であった訪日外国人旅行者数は、
平成 30 年に初めて 3,000 万人を超え、

我が国に在留する外国人も令和元年6月末時点で 283 万人、
我が国で就労する外国人も平成 30 年 10 月末時点で 146
万人と、それぞれ過去最多を記録している。

政府においては、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」
という。)の改正による新たな在留資格である「特定技能1
号」及び「特定技能2号」の創設(平成 31 年4月施行)を
踏まえつつ、

外国人材の受入れ・共生のための取組を、より強力に、かつ、
包括的に推進していく観点から、

平成 30 年 12 月に「外国人材の受入れ・共生のための総合
的対応策」(以下「総合的対応策」という。)を決定し、

令和元年6月には、外国人材の受入れ環境整備をめぐる喫緊
の課題を中心に「外国人材の受入れ・共生のための総合的対
応策の充実について」(以下「充実策」という。)を取りま
とめ、

政府一丸となって関連施策を着実に実施してきた。

今般、これまでの関連施策の実施状況も踏まえつつ、充実策
の方向性に沿って、総合的対応策の改訂を行った。

総合的対応策は、外国人材を適正に受け入れ、共生社会の実
現を図ることにより、

日本人と外国人が安心して安全に暮らせる社会の実現に寄与
するという目的を達成するため、

外国人材の受入れ・共生に関して、目指すべき方向性を示す
ものである。

政府としては、条約難民や第三国定住難民を含め、在留資格
を有する全ての外国人を孤立させることなく、社会を構成す
る一員として受け入れていくという視点に立ち、

外国人が日本人と同様に公共サービスを享受し安心して生活
することができる環境を全力で整備していく。

その環境整備に当たっては、受け入れる側の日本人が、共生
社会の実現について理解し協力するよう努めていくだけでな
く、

受け入れられる側の外国人もまた、共生の理念を理解し、日
本の風土・文化を理解するよう努めていくことが重要である
ことも銘記されなければならない。

在留外国人の増加が見込まれる中で、政府として、法務省の
総合調整機能の下、

引き続き、外国人との共生社会の実現に必要な施策をスピー
ド感を持って着実に進めていく。

もとより、外国人との共生をめぐる状況は、絶えず変化し続
けていくものであり、

総合的対応策に盛り込まれた施策を実施していれば足りると
いうものではない。

国民及び外国人の声を聴くなどしつつ、引き続き、定期的に
総合的対応策のフォローアップを行い、

必要な施策を随時加えて充実させながら、政府全体で共生社
会の実現を目指していく。

============================

この中で特に重要なのは、本施策の目的であるこの部分。

> 総合的対応策は、外国人材を適正に受け入れ、共生社会の実
> 現を図ることにより、
>
> 日本人と外国人が安心して安全に暮らせる社会の実現に寄与
> するという目的を達成するため、
>
> 外国人材の受入れ・共生に関して、目指すべき方向性を示す
> ものである。

つまり、外国人との共生社会を目指すということです。

そして、それは日本人も外国人もともに相互理解に努める
中で実現していくものだということ。

さらに、この施策は【法務省】のマネージメントの下で
行われるということ。

ここは結構大事だと思います。

さらに、

「共生社会の実現に必要な施策をスピード感を持って着実に進め」

しかも、

「必要な施策を随時加えて充実させながら、政府全体で共生社
会の実現を目指していく」

と、単に関係省庁の「とりあえずやった」という既成事実作りに
終わるのではなく、

実効性のある施策を継続的に進めていくという点も、注目したい
所です。

このあたり、国の本気度を感じました。

実際、この報告書が出されてから、国や地方自治体がにわかに
ざわざわと動き始めています。

今後の動向に注視したいですね。


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