「総合的対応策(改訂)」を読む(1)。
「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(改訂)」
http://www.moj.go.jp/content/001311603.pdf
(以下、改訂版総合的対応策)は、
平成30年に出された「外国人材の受入れ・共生のための総合的
対応策」(以下、総合的対応策)の改訂版として、令和元年12月
の閣僚会議で決定されたものです。
この総合的対応策ならびに改訂版総合的対応策は、戦後の
日本語教育における、いわば
【第3の波】
とも言うべき重要な施策といえます(あくまでも、私見です)。
ちなみに、【第1の波】は、中曽根首相が1983年に発表した
「21世紀への留学生政策の展開について」
いわゆる「留学生受入れ10万人計画」です。
これは、2000年までに受け入れ留学生を10万人にまで
増やそうという計画で、
これを機に、日本では留学生の積極的な受け入れが起こり、
日本語ブーム、そして日本語学校の乱立、さらに、国とし
ての受け皿の整備が急ピッチで行われました。
日本語能力試験や日本語教育能力検定試験ができたのも、
このころです。
結局、予定より3年遅れの2003年に達成されました。
日本語教育史を勉強したことのある方であれば、お馴染みの
内容ですね(^_^)
そして、【第2の波】は、福田首相が2008年に発表した
「留学生30万人計画」。
これは、2020年までに受け入れ留学生を30万人にまで
増やそうという計画で、
これも10万人計画のときと同様、積極的な留学生受け入れ
施策がとられ、
と同時に、従来「就学生」と言われていた日本語学校生も
入管法改正により「留学生」としたことで、さらに留学生
数が嵩上げされたりして、
結局、2年前倒しの2018年に達成されました。
そして、【第3の波】として「総合的対応策」が出された
というわけです。
ただし、この「総合的対応策」は、前2つの波とは比べ物
にならないほど大規模です。
というのも、前2つの波は、多様な日本語学習者のうち
「留学生」に特化したものであるという点で、施策とし
ては限定的。
しかし、「総合的対策」は、留学生だけでなく、
▼特定技能の外国人
▼生活者としての外国人
▼外国人労働者
▼外国人の子ども
と、対象となる外国人が広範囲にわたるからです。
そもそも日本で生活する外国人は、ほぼほぼ「生活者」
なわけですから、日本に住む外国人全部!といった感じ
です。
もちろん国からの予算も総額211億円と大規模。
また、「総合的対策」の特徴と私が考えているのは、
多くの省庁が関わっている、つまり国が労力を上げて
取り組もうとしている点、
そして、教育界だけでなく産業界や地方自治体も大きく
関わっているという点です。
実際、このところ地方自治体のいたるところで外国人
支援施策が始まっています。
(この辺りはニュースフラッシュで紹介している通り。)
また、国も日本語教育推進基本法を制定したり、日本語
教師の新たな資格「認定日本語教師(仮称)」の制定に
乗り出しています。
産業界ではすでに多くの企業が、労働力として技能実習
生や留学生などに依存しています。
今後、この動きはますます加速していくはずですし、
私たち日本語教師の働き方も大きく変わっていくと
考えられます。
「総合的対応策」は、まさにこうした変化の出発点と言っ
ても過言ではない、重要な施策なんですね。
というわけで、本格的に読むのは次回からとして、
ひとまず、こちらの資料
〔詳細版〕外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(改訂)
の概要【PDF】
http://www.moj.go.jp/content/001311601.pdf
は、ざっと目を通しておいてください。
次回以降の理解がスムーズになると思います。