「知って」もできないから「できる」まで引き上げるのが教師。
明後日の
篠研の日本語の教え方ワークショップ
「初級文型導入の授業準備を短縮する方法
-まずは1時間以内、そして30分、最速10分」
でお話しする話を少し。
どうしてこのセミナーをしようと思ったかと
いうと、
多くの方から
「初級の文型導入の授業準備に時間がかかって
仕方がない。何とかならないか。」
というお話を数多く頂いたからなわけですが、
そもそも、ここで押さえておかなければなら
ないことは、
私たち日本語教師は、学習者に文型の意味用法を
教えることがゴールなのではなく、
その文型を日常生活で自由に使いこなせるように
することがゴールであること、
そして、文型を導入した段階では、学習者はその
文型を使いこなすレベルにはまだ達していないと
いうことです。
つまり、「できる」レベルに達していないと
いうことです。
学習者を「できる」レベルまで引き上げるため
には、文型導入の後、
▼口ならしの文型練習
▼コンテキストのあるコミュニカティブ活動
▼コンテキストのないコミュニカティブ活動
など、とにかくアウトプットの活動をしっかり
行い、
とっさのときに、正しく言ったり書いたりできる
ようになるまで練習しないといけません。
これは、スポーツと一緒。
競技のルールや基本的な動作を一通りレクチャー
されても、すぐに試合ができるわけではなく、
基本動作の反復練習を繰り返し行い、その動作が
とっさのときに正しくできるよう、
体にしみこませなければ、思うようなプレイを
することができません。
技を使いこなすためには、膨大な反復練習が
必要なのです。
言語の習得も同じで、
「競技のルールや基本的な動作を一通りの
レクチャー」
はいわば「文型導入」。
体にしみこませるための「基本動作の反復練習」
はいわば、
▼口ならしの文型練習
▼コンテキストのあるコミュニカティブ活動
▼コンテキストのないコミュニカティブ活動
だから、限られた授業枠の中で収めるためには
本来は文型導入などさっさと片づけ、どんどん
アウトプットの活動をしないといけないはずな
のです。
普段の授業で、コミュニカティブ活動、しっかり
やってますか。
文型導入から文型練習当たりで時間切れになって
いませんか。
もしそうだとしたら、文型導入は、文型の意味
用法が分かることがその目的なので、
ぶっちゃけ文法翻訳本などを各自で読ませて10分
ぐらいでパパっと済ませ、
さっさとアウトプットの活動に移るほうが、よほど
いいのです。
にもかかわらず、文型導入の授業準備に時間が
かかるというのは、もしかしたら、
「知る」=「できる」
と教師側が無意識のレベルで思い込んでいるから
ではないか、
あるいは、
「知る」ようにするところまでが教師の仕事、
「できる」ようにするのは学習者の努力
のようなビリーフが教師側にあるからなのでは
ないか、
とさえ思ってしまうのですが、いかがでしょうか。
ですが、今の時代、「知る」だけなら、ネット上の
情報でおおかた間に合います。
そこに、教師が心血を注ぐ意味は、今の時代
あまり意味がないのです。
一方、学習者は、たとえ「知って」も「でき」ない
からいつまでも右往左往するわけで、
「できる」レベルまで引き上げるところに日本語
教師の存在価値があるのです。
だとすれば、
私たちは、もっと仕事の比重の置き方を考え直さ
なければならないと思うのですが、いかがでしょうか。
このセミナー、実は意外と奥が深いのです(^_^)