敬語の3分類と2種類の謙譲語。
日本語の敬語というと、尊敬語・謙譲語・丁寧語の
3分類が広く知られています。
代表的な言語形式をあげると、(1)のようになります。
(1)尊敬語:「お/ご~になる」(例:荷物をお持ちになる)
「いらっしゃる」「召し上がる」
謙譲語:「お/ご~する」(例:荷物をお持ちする)
「参る」「いただく」
丁寧語:「~です」「~ます」(例:行きます/食べます)
さらに、「お酒」の「お」のように、物事をきれいに言う
美化語を加える場合もあります。
ただ、日本語の敬語、特に謙譲語をよく見てみると、
さらに2つのタイプがあることに気がつきます。
(2)をご覧ください。
(2)私はやくざに「もう人殺しはやめろ。」と
( 申しました *申し上げました )。
(*は非文を表す。)
「申し上げる」も「申す」もどちらも同じく
「言う」の謙譲語ですが、
(2)の文では「申し上げる」は非文となり
「申す」は正しい文となります。
「申す」が正しいのは、聞き手に向けられた敬意表現
であるため、
聞き手が目上の人や社会的に上位の人であれば問題
ないからです。
一方、「申し上げる」が非文になるのは、
「言う」という動作の向かう相手である「やくざ」に
敬意が向けられた表現となっているからです。
「やくざ」は社会通念上敬意を表す対象としてふさわしく
ないため非文となるのです。
このように、日本語の謙譲語には、聞き手に向けられ
たものと
動作などが向かう相手に向けられたものの2つの
タイプがあるわけで、
両者を適切に使い分けないとおかしな文を作ってしまう
ということになります。
これが、後に謙譲語Iと謙譲語IIという新たな分類に
繋がっていくわけです。