日本語教育史重要人物伊沢修二と童謡「ちょうちょ」の意外な関係。
「ちょうちょ、ちょうちょ、菜の葉に止まれ♪」
と言えば、誰もが知っている童謡「ちょうちょ」の
一節。
一方、伊沢修二といえば、戦中の日本語教育史では
山口喜一郎、松本亀次郎に並ぶ重要人物。
台湾総督府学務部長として、台湾で初めて日本語教育を
した人物、
そして、在任中に起きた芝山巌事件で覚えている方も
多いと思います。
ところで、この両者は実は意外なところでつな
がっています。
というのも、童謡「ちょうちょ」のメロディを
日本に持ち込んだのは、他ならぬ伊沢修二なんですね。
そもそも童謡「ちょうちょ」のメロディは日本の
ものではありません。
一節には、ドイツの童謡
「Hanschen klein」(訳:「幼いハンス」)
という曲が原曲とされています。
しかもこのメロディは、親しみやすく覚えやすい
ということで、
いろいろな国で、その国々の言葉の歌詞が(日本
同様、好き勝手に)つけられて歌われているようです。
で、もともと吃音矯正の大家であると同時に、
音楽教育家でもあった伊沢修二は、
アメリカに留学した際、留学先の教師からこの
曲を教わり、日本に持ち帰った。
そして、野村秋足がそれに歌詞を付け、後に文部省
発行の『小学唱歌集』に掲載され、いまに至った
ということなのです。
こんな事実、どれだけ日本語教育関連の文献を
ひっくり返しても出てこないですよね。
日本語教育に出てくる人物というと、とかく
お堅い言語学者、教育学者、
さもなければ、その時代の政治的権力者という
イメージを持ってしまいがちですが、
実は、私たちの知らないところで、意外な一面
も持っていたりするのです。
逆に、そういう事実を知ると、その人物をより
厚みのある人物として理解できるのではないで
しょうか。
日本語教育に出てくる人物を、一度、日本語教育
以外のリソースで調べてみるとおもしろいかも
しれません。