指導の引き出しを増やしたければ、検定試験の過去問を研究せよ。
日本語教育能力検定試験の過去問を
研究するということは、
単に試験勉強のためだけではなく、
自身の指導力や授業の引き出しを増やしたり、
指導の幅を広げたりするのに非常に有効です。
例えば、平成27年度の試験IIIでは、
初級後半の学習者に対するスピーチ指導
が出題されました。
こんな問題です。
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問4 スピーチ原稿の際に、学習者に行う支援として
不適当なものを、次の1~4の中から一つ選べ。
1 構成や内容を考える際の材料となるモデルを与えて、
参照できるようにする。
2 未習語を使う場合は、辞書の用例で使い方を確かめ
るよう助言する。
3 自分が体験・経験したことのある内容を中心に構成
するよう助言する。
4 他の人と相談せずに、自分のアイデアで内容を決定
するよう助言する。
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この問題の答えは4番。
他人と相談しないのではなく、
他人とも相談しながら自分のアイデアを
練っていくということが大事なんですね。
逆に言えば、
選択肢の1~3はスピーチ指導をする際の
非常に重要な指導ポイントであるという
ことができるわけです。
ところで、この問題の3番を見たときに、
以前、別府市で行われた
「外国人による日本語弁論大会」
での留学生のスピーチを思い出しました。
この弁論大会では、地元大分県の日本語
学校の留学生(ネパール人)が参加して
たんですが、
その彼のスピーチが大変印象的でした。
だいたいこんな内容。
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私が初めて日本に来たとき、日本語が
全然わかりませんでした。
ですが、日本語学校で日本語を勉強する
うちに、
だんだん日本語ができるようになって
生活にも困らなくなるようになりました。
そうすると、日本人からよく
「いや~君は日本語が上手だね。
下手な日本人よりよっぽど上手いよ。」
と言われることが多くなりました。
私は、そう言われるたびに
「どうしていつも下手な日本人と比べられる
んだろう。
下手な人より上手いのは当たり前じゃないか。」
と思いました。
「下手な日本人と比べられるんだから、
私の日本語はまだまだなんだな。」
とその時は思ったのですが、
後になってそれは、日本人独特の褒め言葉である
ということを知ったのでした。
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なるほど! 確かに!
確かに、私たちは人を褒めるときに
「下手な○○よりよっぽど上手い」
という言い方をしますよね。
でも、考えてみれば実におかしな表現。
留学生に一本取られた!!
そんな爽快な気分になりました。
もちろん会場も、どっと沸きましたよ(^_^)
彼のスピーチが聞く人の心に響いたのは、
とりもなおさず、その内容が留学生自身が
自ら体験したものだったから。
だから、そこにリアリティやオリジナリ
ティーがあって、響いたわけですね。
しかしながら、それだけではないと
私は考えています。
指導なさった先生が、彼の隠れた体験を
うまく引き出してあげなかったら、
きっとこのスピーチは生まれなかったに
違いありません。
「無理に立派なことを言おうとしたりする
必要はないんですよ。
自分が実際に経験したことを中心に
スピーチ原稿を作ることが大切なんですよ。」
そういうご指導があったからこそ、
学生は自分の経験に価値や意義を見出して、
「あ、自分のこういう経験でスピーチしても
いいんだ。」
と思った。
その結果、このような魅力溢れるスピーチに
つながったんだと思います。
そこから翻って、最初の検定試験の問題を
見てみると、
正解以外の選択肢も含めて、いたるところに
指導のコツ、肝がちりばめられている
ということがわかります。
だからこそ、
「指導の引き出しを増やしたければ、
定試験の過去問を徹底的に研究せよ。」
なのです。
「試験が終わったら、試験問題なんてお役ご免。」
それは、本当にもったいないことなのです。
ですので、
特に指導の引き出しが少ないと悩んでいらっしゃる
方は
ぜひ過去の試験問題を徹底的に吟味していただきたい。
そこから、いろいろな指導技術、指導のコツが掴める
はずです。
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