外国人学校での子どもの言語生活。

よく日本の学校で学ぶ外国人児童
生徒で問題になるのが日本語の問題。

 

この分野の勉強をなさったことのある方なら

BICS(生活言語能力)と
CALP(認知学習言語能力)は

耳にタコができるほど聞いたことがあるでしょう。

 

また、文部科学省も2年に1回、調査して
いますね。(検定試験必出!)

 

最新のものはこちら。

「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に
関する調査(平成 28 年度)」の結果について」
https://bit.ly/2RyhGm1

 

日本の学校の言語環境は、外国人児童生徒に
とっては母語環境ではないわけですから、
困難を感じるのは想像に難くありません。

 

一方、外国人学校の場合はどうなのでしょうか。

 

民族学校にしても、国際学校にしても、
学習者の母語環境(あるいはそれに近い)
であれば、

日本の学校のような問題は起こらない
のではないか。

 

そう想像する方もいらっしゃるかもしれま
せんね。

 

この点について、

朴三石『外国人学校』中公新書
https://amzn.to/2KNl6P7

では、このように述べています。

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学校生活での子どもたちの言語生活はどうなのだろうか。

セント・メリーズ・インターナショナル・スクールの先生
と話していて、興味深かった話があった。

その先生は、

「国際人といっても、軸になるものが必要です。

インターナショナル・スクールは国際人を育てると
いっても、軸となるアイデンティティがあります。

その場合、それを支えるのが母国語だと思います。

自分の母国語とは何か。

それは自分が一番、自然体でいられるとき、どのように
感じているか、口ずさむ言葉が母国語ではないでしょう
か。

それが自分のアイデンティティと深いところでつながっ
ているものではないでしょうか。」

といっていた。(p.55)

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外国人学校であっても、児童生徒の母語形成は
アイデンティティと結びついてとても重要。

 

だから、教育者もそのことを十分踏まえて教育に
当たらなければならないわけです。

 

とはいえ、外国人児童生徒の母語をネイティブ並みに
育成していく環境を日本で再現するのは相当困難。

 

というか、ほぼほぼ不可能。

 

そこを十分考慮せず、

「家族と一緒に住むのが一番!」

と判断して安易に家族を日本に呼び寄せるのは、
かえって子どもを不幸にしてしまうのではないか。

そのように思います。

 

もしも自分が親の都合でダブルリミテッド(=母語
も第二言語も不十分な状態)になったらと想像する
とゾッとします(絶対大学教員なんかなれてないです)。

 

しかも、子どもの母語教育は学び直しがききません。

学ぶべき機会を失うと、一生不十分なままなのです。

当然、進学、就職、結婚、昇進にも響きます。

 

もちろん、親に十分な経済力があって、月謝の高い
国際学校に入れ、

住み込みの家庭教師を複数人雇えるような家庭で
あれば話は別です。

 

ですが、日々の生活にも厳しく、子どもを学校に
やれないような家庭なら、

むしろ、父ちゃんと兄ちゃんだけ日本でしこたま
働いて、

他の家族は母国で、母語環境の中で、親戚や地域
の仲間に支えられながら生活したほうがいいので
はないか。

 

このように私が言うと、ある方が私にこう言い
ました。

 

「例えば、ブラジル人にとって家族と離れて
生活するのは、あり得ないことです。

離れて暮らすことで起こる問題もあるのです。」

 

なるほど、確かにそうかもしれません。

 

ですが、私なら、そう言うブラジル人に対して
こう押し返すでしょう。

「あなたは、母国では10年も20年もかけて働かないと
稼げないお金を、日本で数年で稼ごうと思っている
んでしょ。

だったら、相応の犠牲は覚悟しなさい。

日本人だって、単身赴任もすれば、出稼ぎ労働も
するんです。

大金を稼ぐって、そういうことなんです。

日本はあなたの国より給料がいいかもしれませんが、
生活コストも高いのです。

子どもがいればなおさらで、まずお金はたまりま
せん。

だから、日本で働くのであれば、あなただけ日本で
働き、家族は母国に残しなさい。

もし、あなたの家族が反対するのなら、あなたが
家族を説得すべきだし、

あなた自身が家族と離れたくないのであれば、日本
での仕事はあきらめることです。」

 

今の外国人受け入れ議論では、「家族帯同」「家族呼
び寄せ」を是とする意見が強いようです。

 

あるいは、外国人もそれを望んでおり、そうしないと
日本は選ばれないという意見もあるでしょう。

 

しかし、本当にそうか。

 

また、外国人児童生徒の言語サポートを行政
主導でするということは、

そこにかかるコストは税金で賄われるわけですから、
国民は増税を覚悟する必要もあるでしょう。

 

例えば、ドイツは移民に対するドイツ語教育が国策
としてなされています。

その一方で、ドイツの消費税は19%。

 

国民も出すところでちゃんと出さないと、多文化共生
は成立しない。

 

私たちは、そうしたことも併せて考えないといけない
わけです。

 

私たちは、外国人をどう受け入れていくのがベスト
なのか、

一度、外国人の子どもの置かれる言語環境という視点
も十分踏まえて考えてみる必要があるのではないで
しょうか。

犠牲になるのは、物言わぬ子どもなわけですから。


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