ソシュールは双葉より芳しすぎたという話。

フェルディナン・ド・ソシュールと言えば、
言語学のテキストに必ず出てくる人物で、

「ラングとパロール」や言語研究における
「通時態と共時態」など、

現代の言語学研究の基礎的概念を築いた
「近代言語学の父」と呼ばれる巨匠です。

 

彼がどれくらい卓抜した才能の持ち主だったか
を示す逸話があります。

 

加賀野井秀一『20世紀言語学入門-現代思想の原点』
講談社現代新書
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に以下のような一節があります。

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フェルディナンは幼少期に、母方の祖父から言語への興味を
かきたてられ、やがてジュネーヴ郊外の別荘の隣人であるア
ドルフ・ピクテの知遇を得ることになる。ピクテは『インド
=ヨーロッパ諸語の起源』を著わし、言語古生物学の創始者
となった人物だが、ソシュールは彼に、なんと14歳で「ギリ
シャ語、ラテン語、ドイツ語の単語を少数の語根に縮約する
ための試論」という処女論文を提出している。さらにコレー
ジュ(高等中学校)時代には、やがてカール・ブルクマンが
仮説をたてて言語学会を揺るがすことになる〈鼻音ソナント〉
の存在を事前に予測するなど、早熟ぶりを発揮した。(p43-44)

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なんと処女論文が14歳ですよ!

 

今の私たちで言えば中学2年生。

 

2年生の私といえば、英語の勉強に
四苦八苦していた時で、

「ing」の意味がどうのこうのとか

過去完了の「have」がどうのこうのとか

そういうレベルで四苦八苦していました。

 

そういう時に、なんと14歳で3つの言語を
知り、

それを学術レベルまで分析し、論文を
書いている。

 

いかにソシュールが幼少期から卓抜した才能
だったかということがわかります。

 

本文には、さらに以下のような内容が述べ
られています。

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ジュネーブ大学では、親の意向にしたがって理系へと進むが、
言語学への思いはつのり、パリ言語学会の通信会員となる。
やがて彼はドイツに留学して、ライプチヒ大学とベルリン大
学という当時のインド=ヨーロッパ「比較言語学」のメッカ
に学び、とりわけ勢力を拡大しつつあったブルクマン、ヘル
マン・オストホフら「青年文法学派」との交流や反目の中で
思索を深めていった。(p.44)

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ソシュールの出身はスイスですので、
母語がドイツ語であれば、国をまた
いでも言葉の弊害は少ないとは思いますが、

それにしても若い時から海外に留学して、
第一級の言語学を学んでいたんですね。

 

さらに、彼の才能はその後も続きます。

以下引用。

 

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その後「インド=ヨーロッパ語のさまざまなaの弁別に関する
試論」(一八七六)、『インド=ヨーロッパ諸語における母
音の原初体系に関する覚書』(一八七八)など、画期的な論
文をつぎつぎと発表し、弱冠21歳で学会の巨匠となるのだが、
これについては、おもしろい逸話が残されている。ある日ソ
シュールが、ゲルマン語学者ツァンケのもとを訪れると、老
教授は若き巨匠にこうたずねたというのである。「ひょっと
してきみは、同姓同名のあの有名な言語学者の親類ではない
のかね」。(pp.44-45)

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当時の言語学会に大きな影響を与えた論文の著者が
まさか若干21歳とは!

 

21歳と言えば、大学3年生。

 

ようやくこれから卒論のために論文の書き方の勉強を
しようかという年代だと思いますが、

もうその時に学会を揺るがす論文をつぎつぎと発表
していたと。

 

「栴檀は双葉より芳し」

と言いますが、

「いやいや、芳しすぎるでしょ!」

という話。

 

もうこれで

「フェルディナン・ド・ソシュール」

の名前は忘れないですね。

 

ところで、

この検定試験の勉強をしていると、
たくさんの欧米の学者の名前が出てきます。

 

それをただ表面的に字面だけをたどれば、
単なるカタカナの羅列に過ぎず、
なかなか記憶に残りませんが、

 

こうして学者の生い立ちや人となりまで
突っ込んで、その学者に関する知識を増やすと、

脳内で確固としたイメージ形成がなされ
絶対忘れません。

 

皆さんの中にも、何回読んだり書いたりしても
なかなか覚えられない研究者が何人かいるん
じゃないかと思います。

 

そんな時、一度じっくり事典やwikipediaでも
構わないので、

その研究者の生い立ちや人となりに関する情報に
触れてみる。

 

そうすると、

「えっ!チョムスキーって、まだ生きてたの?」
(失礼。でも、そう思っていた方、多いのでは?)

など、思わぬ発見、インパクトのある新事実に
出会えるかもしれません。

 

その結果、その研究者を親近感を持って覚えられれば
試験勉強も楽しく進められるのではないかと思います。


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