初級文型「てある」に50%の割合で前接する動詞とは?

昨日の基礎固めセミナーで、コーパス言語学
研究の進展によって、日本語教育の常識が
どんどん覆されているという話をしました。

ちなみに、コーパス言語学とは、簡単に言うと

「自然言語(=私たちが普段使っているごく
ふつうの言語)をデジタル化したビッグデータ」

といったところでしょうか。

で、その研究成果の一例として

中俣尚己(2014)
『文法コロケーションハンドブック』
http://urx2.nu/sEiP

(↑一般の日本人が初級の文型を実際どの
ように使っているかを知りたい方にお勧
めです。)

を紹介しつつ、初級文型「てある」の前接する
動詞について紹介しました。

今回は、セミナーの補足説明を兼ねて、
この点について深掘りします。

コロケーションとは、簡単に言えば、

「一つの文の中で、一緒に使われることが多い
複数の語」(p.4)

これで得た知見を授業に取り入れることに
よって、

それぞれの文型に結びつきやすい語を、
いわば「出る順」に学習者に提示することが
でき、

これまでやっていた指導項目のうち、使用頻度
の低いものを排除する。

つまり、指導効率・学習効率を格段にレベル
アップさせることができるわけです。

これは本当に画期的なことです。

ところで、

「初級文型「てある」に50%の割合で前接する
動詞」

わかりますか。

考えてみてください。

わかりましたか?

正解は、「書く」です。

つまり、「てある」を日本人が使う場合、
その半分は、「書いてある」なんですね。

中俣氏は、上の著書で以下のように指摘して
います。

====================

・「書いてある」が圧倒的に多く、「書く」
のための文法といえるほどである。これに
「置いてある」「はってある」などを加え
れば、大半をカバーしたことになるだろう。
(p.98)

====================

ということは、どういうことか。

例えば、学習者に、

「教科書は 机の引き出しに しまって
あります。」

とか、

「棚の上に 人形が 飾ってあります。」

といった例文を授業で提示したところで、
意味がないということです。

なぜなら、そんな日本語ほとんどだれも
使わないから。

文型練習で、「てあります」の前に五段動詞
やら一段動詞やら、不規則動詞やらをいろいろ
入れて練習しても、

やるだけ無駄ということです。

なぜなら、「てある」に前接する動詞は、
「書く」「置く」「はる」ぐらいしかない
から。

いかがでしょうか。

今まで、良かれと思ってやっていた文型練習
が、実は無駄骨だった。

これは、かなりショッキングなことではない
かと思います。
(でも、事実なんだからしょうがない。)

誤解しないよう付言しますが、これはあくま
でも「てある」に限ったことであって、

文型が変われば事情は変わります。念のため。

では、学習者が「てある」を使いこなせるよう
になるためには、どういった練習が必要なので
しょうか。

中俣氏は、さらに以下のように続けます。

=====================

・「書いてある」の格パターンは「~に~と
書いてある」が最も多く、その次が、「~に
~が書いてある」である。引用の「と」が導
入されているのであれば、クーポン・散らす
などのレアリアを使って、「ここに100円引
きと書いてあります」などと実際に使われる
場面を見せることができる。(p.98)

=====================

例えば、文型練習をする場合も、従来のように

「V+てある」

で、Vにいろいろな動詞をやたらめったら差し
込むのではなく、

「AにBと書いてある」
「AにBが書いてある」

という形で、ABにいろいろな語彙を入れる代入
練習をしたほうが、現実的な日本語力の育成に
つながるというわけです。

いかがでしょうか。

検定試験の勉強からも、これだけ実践的なこと
が学べるのです。


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